今月のキーワード

「OECD教育政策レビュー」

経済協力開発機構(OECD)が「日本の教育政策レビュー」の最終報告をまとめた。全人的教育により各種国際調査でも高い成果を示している日本の教育や、学習指導要領改訂の方向性を高く評価しながらも、少子高齢化や格差拡大で、その持続可能性に懸念を表明。新指導要領の実現に注力するよう提言している。
 OECDが日本の教育政策に関してレビューを行うのは約10年ぶり(前回は高等教育が対象)。今回は第3期教育振興基本計画(2018〜22年度、6月15日閣議決定)の策定に生かしたい文部科学省の要請で行われ、中間報告(非公表)の概要は昨年7月の中央教育審議会の部会に報告され、3月の答申に生かされた。
 今回の指導要領改訂は、OECDが21世紀の教育の在り方を世界に提案するプロジェクト「Education2030」と「同期」(鈴木寛・文部科学大臣補佐官)して行われたとされる。文科省とOECDは政策対話を重ねてきており、東日本大震災を契機とした「OECD東北スクール」(現在は「地方創生イノベーションスクール2030」に
継承)の成果も生かされている。
 しかし、OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は日本記者クラブで行った会見で「書かれた指導要領を教室で実現するのは『言うはやすく行うは難し』だ」と強調。教育が優先事項とされていることや全人的教育は日本の強みだが、その裏返しとして、持続可能性が課題だとした。
 シュライヒャー局長は具体例として、教員一人当たり生徒数(ST比)で日本とともにOECD平均の前後に位置する米国と中国を挙げた。米国は日本より1クラスの人数が少ないが、教員の仕事が授業に特化されているため、研修の機会が十分でなく、全人教育も損なわれている。一方、中国は学級規模が大きいものの、研修の機会は豊富で、同僚との協働や保護者とのやり取りも多い。
 国内でも「エビデンス(客観的な証拠に基づく政策」の重要性が強調されている。OECDのデータも、エビデンスとして引用されることが多い。確かにOECDは「生徒の学習到達度調査」(PISA)の結果から、少人数学級の推進に疑問を呈していることも確かだ。しかし、大人数の学級でも幅広い学力成果を上げている日本の教育の高い「生産性」を評価した上で、限られた財源を教員の質向上に投資して専門職としての意識向上を推奨しているのであって、単に少子化に応じた財政削減を求めているわけではない。省庁の論理から自分勝手な解釈を加えるのではなく、データや提言を真肇に受け止める姿勢こそが問われそうだ。

 

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

渡辺 敦司(わたなべ・あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年に横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。
1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。

ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

バックナンバー