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「高校の新学習指導要領」


 2017年度末、高校の新学習指導要領が告示された。新年度から全校種で、新教育課程への対応に向けて動き出した。
 今回の改訂は、よく「高校がターゲットだ」と言われる。確かに小学校英語の教科化と並んで、高校の大幅な科目再編は目玉だ。ただ、中央教育審議会で改訂論議の中心的なメンバーを務めた奈須正裕・上智大学教授は3月に東京都内で開かれた「教育の情報化推進フォーラム」で行った講演で、前回改訂では小中の学力低下への対応に注力したため高校にまで手が回らず、「今回、ある意味で2回文の改訂が来ている」と解説した。
 もちろん今回の改訂が高大接続改革の中で実施する改訂であることは疑いないが、小・中学校などと共通して「社会に開かれた教育課程」を掲げ、①知識・技能②思考力・判断力・表現力等③学びに向かう力・人間性等──この三つの柱で資質・能力の育成を図ろうとしていることも忘れてはならない。アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)を導入するのもそのためだし、高大接続改革の一環としての大学入学者選抜改革で「学力の3要素」(①知識・技能②思考力・判断力・表現力③主体性・多様性・協働性)をすべて評価して入学者を選抜するよう求めているのも、高大接続改革と両輪を成す「明治以来の大改革」として改訂を検討してきた表れだ。
 国語の必履修科目に「現代の国語」と「言語文化」、選択科目に「論理国語」と「文学国語」などが設けられたのも、そうした文脈に位置付けると納得がいこう。小・中学校では全国学力・学習状況調査(全国学調)のB問題にみられる通り、情報を的確に理解し効果的に表現する力の育成が求められている。大学入学共通テストで記述式問題を導入するのも、その延長線上にある。
 地理歴史科で「歴史総合」を創設するのも、日本史を必履修に加える苦肉の策という側面はあるものの、現代的な諸課題の解決を考えるために近現代史を「問い」から捉え直すためだ。公民科で「公共」を新設するのも、単に18歳選挙権に対応するという意義にとどまらない。
 外国語はⅠ〜Ⅲの科目名が「英語コミュニケーション」が「コミュニケーション英語」に変わるが、「英語表現」Ⅰ・II と併せて、4技能5領域(「話すこと」を「やり取り」と「発表」に分ける)によるコミュニケーション能力の育成を徹底しようとする意図を読み取るべきだろう。共通テストで民間の資格・検定試験の活用を導入したことも、それと連動している。実際、指導要領では教材(教科書)が文法中心にならないよう留意事項を付けているほどだ。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

渡辺 敦司(わたなべ・あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年に横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。
1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。

ブログ「教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説」

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