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「免許外教科担任」

 受験シーズンだけあって今月入試や大学をめぐる話題が多いが、教員の「働き方改革」が迫られる学校現場にとっては地味だが大事な問題かもしれない。文部科学省が「免許外教科担任制度の在り方に関する調査研究協力者会議」を発足させ、2月初めまでに2回の会合を開催している。
 発端は「遠隔教育」だった、というのも分かりにくい。昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画の中で、「IT時代の遠隔教育」の一環として「免許外教科担任の縮小に向けた方策」として、遠隔授業の推進や研修の充実等が盛り込まれた。
 とはいえ、久々に免許外担任の問題を検討の俎上(そじょう)に載せた意義は少なくない。1990年代前半に中・高校を合わせて4万5000件前後あった許可件数は、その後の取り組みもあって着実に減少したものの、近年では1万件強で踊り場状態となっている。
 かつては校内教員の持ち授業時間数を平準化するために横行していたから、教育委員会や学校に解消の努力を求めたのは当然だろう。しかし現在では、減らしたくても減らせない実態が協力者会議に配布されたデータから読み取れる。
 教委へのアンケートによると、校内に当該教科の担当がいない場合に免許外を許可した理由として「定数内では全教科の免許を持った教員を配置できないため」が85%を占め、「免許保有者が病気休暇や育児休業中であるため」も64%あった。一方、担当教員がいても「持ち時間数の平準化」(15%)や「勤務時間の平準化」(32%)より「少人数教育・TTを行うため」(40%)や「特別支援教育や外国人児童生徒への指導のため」(45%)という理由の方が多い。
 この間、少子化に伴って全国的に小規模校化が進むとともに、長期にわたる採用抑制で、各校に全教科の教員を張り付けることが難しくなっている。非常勤講師も過疎地ほど確保するのは難しく、複数校を掛け持ちするのは時間的に無理だ。協力者会議委員の教委担当者からは、定年間近の教員に免許更新講習を免除してほしい、という悲痛な叫びも聞かれた。
 本格的な教職員定数改善計画が実現できないまま10年以上がたつ。それどころか中央教育審議会の「学校の働き方改革特別部会」では、学級担任として教員1 人を配置するという定数の在り方そのものを見直すよう求める意見も出ていた。負担軽減だけでなく教育の質の担保のためにも、たとえ小規模校だろうと教員免許という最低限の資質・能力を持った指導力のある教員の確保が不可欠だ。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

渡辺 敦司(わたなべ・あつし)

1964年、北海道生まれ。
1990年に横浜国立大学教育学部を卒業して日本教育新聞社に入社し、編集局記者として文部省(当時)、進路指導・高校教育改革などを担当。
1998年よりフリーとなり、「内外教育」(時事通信社)をはじめとした教育雑誌やWEBサイトを中心に行政から実践まで幅広く取材・執筆している。

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