お知らせ

「次期学習指導要領」

次期学習指導要領のうち、小・中学校と幼稚園が3月末に告示された。特別支援学校の幼稚部・小学部・中学部も4月末に告示される。高校と特別支援学校高等部は1年遅れで告示となる見通し。
 次期指導要領は、
▽教育基本法、学校教育法などを踏まえ、これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を活かし、子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成する。その際、子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し、連携する「社会に開かれた教育課程」を重視する▽知識及び技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成のバランスを重視する現行指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成する▽先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視、体育・健康に関する指導の充実により、豊かな心や健やかな体を育成する――を改訂の基本的な考え方としている。
 その上で、知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)として、「何ができるようになるか」を明確化。我が国の教育実践の蓄積に基づく授業改善を行うとした。
 各学校におけるカリキュラム・マネジメン卜の確立としては、▽教科等の目標や内容を見渡し、特に学習の基盤となる資質・能力(言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等)や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成のためには、教科等横断的な学習を充実する必要がある。「主体的・対話的で深い学び」の充実には単元など数コマ程度の授業のまとまりの中で、習得・活用・探究のバランスを工夫することが重要である▽そのため、学校全体として、教育内容や時間の適切な配分、必要な人的・物的体制の確保、実施状況に基づく改善などを通して、教育課程に基づく教育活動の質を向上させ、学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメン卜を確立する――としている。
 また、言語能力の確実な育成、理数教育の充実、伝統や文化に関する教育の充実、道徳教育の充実、体験活動の充実、外国語教育の充実なども行っている。
 特別支援学校では、初等中等教育全他の改善・充実の方向性を重視するととともに、障害のある子供たちの学びの場の柔軟な選択を踏まえ、幼・小・中・高校の教育課程との連続性を重視した。
 全面実施は、幼稚園が2018年度から、小学校が20年度から、中学校が21年度からとなる(特別支援学校の各学部も同様)。ちなみに高校は22年度入学生から学年進行で全面実施となる予定(完成年度は24年度)。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「社会に聞かれた教育課程」

 今月のキーワードというより、これが次期学習指導要領の公式キャッチフレーズなのだという。しかし「社会に開かれた教育課程」をどう実現するのか。現段階で課題は山積していると言わざるを得ない。
 2014年11月の下村博文・文部科学相(当時)による諮問以来、「アクティブ・ラーニング」(AL)が改訂の目玉だとみられてきた。あるいは小学校英語の教科化と高校の科目再編がポイントだとする解説も散見される。
 しかし改訂の最大の眼目は、学力の3要素をバージョンアップさせた「資質・能力の三つの柱」に基づき、教科横断・学校種縦断で指導要領を「構造化」して、カリキュラム・マネジメント(カリマネ)によって各学校で教育課程を編成してもらおうという点だろう。
 一部識者の言う通り「コンテンツ(学習内容)・ベースからコンビテンシー(資質・能力)・ベースへの転換」と呼ぶべきだと思うのだが、当の文部科学省は「転換」という言葉を避けたいらしい。事実、答申では学制以来140年間の連続性さえ強調している。
 「社会に開かれた教育課程」も、改訂の大方針を検討していた教育過程企画特別部会で羽入佐和子主査(当時)が突然表明し、異論もなく15年8月の「論点整理」に取り入れられたものだ。いわゆる「ゆとり教育」の新聞キャッチフレーズに苦しめられてきた文科省当局が、あえて官製キャッチフレーズを打ち出したとみていいだろう。
 しかし、お世辞にも分かりやすいとは言い難い。おまけに保護者や地域住民などが読んでも分かるような指導要領や答申にしたいと言い出し、昨年8月の「審議のまとめ」直前には記者クラブからの批判に応える格好で「学びの地図」という、これまた奇妙なキーワードを出されては、ますます訳が分からなくなる。学習理論に基づく精織な資質・能力論を基底にした改訂だからこそ、学校現場をはじめとした専門家向けと、一般向けの解説をきっちり分けるべきだったのではないか。
 ともあれ3月には答申に基づき、小中学校の指導要領と幼稚園教育要領が告示される。総則を中心に書きぶりは相当変わりそうだが、それが本当に現場にとって「学びの地図」となり得るものか。その上で、「社会に開かれた教育課程」を実現する責任は現場に負わされている。答申名にはわざわざ「必要な方策等」とうたっているが、条件整備や支援策は今後の課題である。何でもかんでもカリマネで解決せよというのは無体だし、ALだって困難だ。何より十分な資質・能力の育成に黄信号が点灯しかねない。改訂に大きな期待を寄せていただけに、あえて苦言を呈しておく。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

ミニフェア「幼児教育・保育書特集」

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「ICTの教育格差」

 文部科学省は、毎年公表している「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の結果公表に合わせて、教育情報化に対応した環境整備を求める通知を出した。同調査では、都道県別はもとより市区町村別の詳細な整備状況も公表している。背景には、次期学習指導要領でアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)が求められるなどICT(情報通信技術)環境の整備が、ますます不可欠になっているのに、自治体間格差がますます進んでいることが背景にある。
 学校のICT環境整備に関しては、政府の第2期教育振興基本計画(2013〜17 年度)で、▽教育用コンビューター1台当たりの児童生徒数3.6人(1校当たりコンビュータ一教室に40台、普通教室に各1台、特別教室に6台、可動式コンビューター40台)▽電子黒板・実物投影機を1学級に1台▽超高速インターネット接続率・無線LAN整備率100%▽校務用コンビューターを教員1人に1台――という整備目標を立てている。14〜17年度の4年間で総額6712億円の財政措置も講じられている。
 曲者なのが、財政措置が補助金ではなく地方交付税であることだ。つまり、いくら閣議決定で政府としての整備目標を定めようと、各自治体で予算化されない限り、いつまでたっても達成できないのだ。
 事実、15年度は1台当たりの児童生徒数が6.2台で、前年度に比べ0.2台分改善したとはいえ、7台を割った09年度以降、足踏み状態が続いている。普通教室の校内LAN整備率は87.7% だが、電子黒板整備率は21.9%にすぎない。校務用コンビューター整備率だけは116.1%だが、あくまで校務にとどまる話だろう。
 整備が進まない理由として、財政難を理由に挙げる自治体は少なくない。しかし、今年3月に行われた日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)のフォーラムで、総務省の御厩(みまや)祐司・情報通信利用促進課長は「エビデンス(証拠)からすると違う」と断言していた。1台当たりの児童生徒数は、むしろ財政力指数が低い自治体の方が少ないという。地域創生のため、教育環境の充実に努めているのだろう。逆に大規模自治体では、福祉や公共事業など他の行政分野、あるいは教育分野でも耐震化などが優先され、なかなかICTに予算が回ってこないようだ。
 同フォーラムで御厩課長は、14年度調査を基に、隣接自治体でも大きな格差が生じている例を紹介していた。15年度の結果と比べると、指摘を受けて一気に整備を進めた自治体もあれば、依然として格差が放置されたままの自治体もある。家庭の経済格差を埋めるにも、居住自治体による教育格差は一刻も早く改善されなければならない。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

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「プログラミング教育」

 2020年度からの全面実施が予定される次期の小学校学習指導要領で、「プログラミング教育」が必修化されることが事実上決まった。ただ、提言したのは指導要領の改訂全体を検討する中央教育審議会の専門部会等ではなく、別に設けた有識者会議。しかも、5月中3回の会合で実質的に決めるという、異例のスピード審議だった。
 プログラミング教育を強化すること自体は中教審部会で既に固まっていたが、あくまで中・高校の話であって、小学校はノーマークだった。一方、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)や人工知能(AI)の進化などに伴う「第4次産業革命」を成長戦略にしたい政府の意向を受けて、馳浩文部科学相(当時)が急きょ小学校でもプログラミング教育を導入することを決め、有識者会議の設置を発表した。
 ただ、委員16人のうち5人は中教審の委員で占められており、必修化に伴う新教科の創設はもとより、教科を指定して特別の時間を割く、といったような、改訂に大きな影響を与えることは避けることが当初から既定路線になっていた。
 もっとも、それは「プログラミング教育」の本質からいっても妥当だった。プログラミング教育といえば、即、プログラミング言語を用いてプログラムを記述する「コーデイング」を教えることだと思われがちだが、まずはプログラムによってモノが動くことや、論理的なプログラムを組む必要があることを理解させる「プログラミング的思考」を育成することが先決だ。それなら現行の小学校算数でも十分対応しているとの指摘は、AIの専門家からもあった。実際のプログラミング体験をするだけなら、学校の実情に応じて、どの学年でも、音楽や図工なども含めて、どの教科でもできる――というわけだ。
 もともとコンピューターの操作方法を教えること自体、特別な時間を取っているわけではないから、プログラミング教育の導入も、総則に一言加えるだけで済む。さらに興味を持った子どもは教育課程外や学校外で本格的なコーディング講座を受ければいいし、報告書でも官民連携の推進体制を提言している。
 それはそれで妥当な結論だと言えなくもないのだが、そもそも次期指導要領がいわゆる「21世紀型スキル」を十二分に想定したものであったのなら、「プログラミング的思考」の育成も当然、視野に入っていたはずだ。ならば政府側からの要請にも「既に盛り込まれていますよ」と突っぱねることができたのに……と残念に思わざるを得ない。裁量に任された学校側が「また○○教育が降ってきた」と受け取らないことを願うばかりだ。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「特に優れた才能」

 政府の教育再生実行会議が第9次提言の中で、「特に優れた能力を更に伸ばす教育」の実施を求めた。ただ、全体の文脈からすると、必ずしもエリー卜教育を奨励したものばかりとは言えないようだ。
 第9次提言の正式なタイトルは「全ての子供たちの能力を伸ばし可能性を開花させる教育へ」。第3次安倍内閣の最重要課題とされる「一億総活躍」実現の基盤になるという位置付けで、当日の会合では加藤勝信・一億総活躍担当相もあいさつしている。
 提言では、多様な個性が生かされる教育を実現するとして、①発達障害など障害のある子どもたちへの教育②不登校等の子どもたちへの教育③学力差に応じたきめ細かい教育④特に優れた能力を更に伸ばす教育、リーダーシップ教育⑤日本語能力が十分でない子どもたちへの教育⑥家庭の経済状況に左右されない教育機会の保証⑦これらの取り組みを効果提起に推進するための体制の整備――を挙げている。
 同一年齢によるクラス集団を基本として、すべての子どもの底上げを図ってきたことが、日本の教育の強みだった。しかし、その中に適応することができず、能力を必ずしも伸ばし切れない子どもが少なからず存在していることは否定できない。「落ちこぼれ」や、学校自体からこぼれてしまった不登校児童・生徒はもとより、近年では、知的な発達の遅れはないものの、特定の学習や生活に困難を来し、クラスの中で特別な配慮を必要とする、発達障害の存在が注目されている。
 注意しなければならないのは、そうした発達障害を抱える児童・生徒の中には、特定分野に飛び抜けた才能を発揮することも少なくない、ということだ。天や神から「ギフテッド」とも呼ばれる。
 発達障害は、「発達の凸凹」とも呼ばれる。できないことがある一方、できることは、ものすごくできる。その発達のバランスが“普通”の子と違うだけである。
 しかし、そもそも“普通”とは何なのか、という根源的な問題を考えさせてくれるのが、発達障害の存在だとも言えよう。障害のあるなしにかかわらず、得意分野に着目して能力を伸ばし、活躍してもらった方が、本人にも社会にもハッピーだ。そういう多様な人たちと共生するのが、今後あるべき社会の姿ではないか。
 日本語能力が十分でない子どもにしても、教育によってはグローバル人材となり得る。そんな発想の転換のきっかけとなるなら、日本社会の在り方を根本的に問い直す契機となる重要な提言となるのかもしれない。政権側に、そこまで本気で推進する覚悟があるのかどうかは知らないが。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「ゆとり教育決別宣言」

 馳浩文部科学相が記者会見で、「ゆとり教育」との決別を宣言した。当日朝、一部新聞が報じたことを受けたもので、同日午後には「教育の強靭(きょうじん)化に向けて」という馳文科相名のアピール文が文科省ホームページに掲載された。
 しかし、文科省が「ゆとり教育」の誤りを認めて「脱ゆとり」に方針転換した、というストーリーを信じている人たちは、改めて文科省が「脱ゆとり」を宣言した、などという報道を、変だとは思わないのだろうか。一方で、著者のように、文科省が行ってきた教育課程行政を「ゆとり教育」「脱ゆとり」というタームで捕らえていては本質を見失うので使うべきではない、と考える者にとっても、宣言は極めて異様に感じる。
 馳文科相は宣言の意図を、アクティブ・ラーニング(AL)をはじめとした学習指導要領の改訂を控えて、目指すべき教育の方向性を明確にしたかったと説明。学習内容の質と量についての疑心暗鬼にも応えたかったという。その回答は、①「ゆとり教育」か「詰め込み教育」かといった二項対立的な議論には戻らない②学習内容の削減を行うことはしない――というものだ。
 しかし二項対立を乗り越えることは、現行指導要領の基になった2008年1月の中教審答申で既に「宣言」済みだったはずだ。学習内容に関しても、昨年8月の中教審教育課程企画特別部会「論点整理」で、次期指導要領は「(現行の)授業時数や指導内容を前提」にすると、こっそり書いてある。世間向けのアピールという以上に、今さら改めて宣言する意味など、まったくない。
 むしろ、マイナス面の方が大きいように思う。これまで文科省は、マスコミの造語である「ゆとり教育」という用語を、慎重に避けてきた。08年答申でも「『ゆとり』か『詰め込み』か」と表現していた。
 馳宣言が何がしかの意味を持つとしたら、文科省として初めて「ゆとり教育」を行政用語として使ったことだろう。それは当然、「文科省が『ゆとり教育』の誤りを認めて―」というストーリーの是認とセットになる。たとえ馳文科相が会見で「(ゆとり教育の)全否定ではありませんよ」と付け加えたところで、ストーリーを創り出した当のマスコミが報じるわけがない。記者自身、ストーリーを本気で信じて報じているから、たちが悪い――と、専門誌記者出身の矜持(きょうじ)として、あえて申し上げる。
 正しいことが報道されない中、宣言文を示された学校現場も、かえって混乱するばかりだろう。大臣自身の信念は別として、パフォーマンス効果は百害あって一利無し、と言わざるを得ない。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「高大接続システム改革」

文部科学省の「高大接続システム改革会議」が1年にわたる検討の末に、最終報告をまとめた。大学入試センタ一試験に替わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の創設が2020年と5年も先であること、そもそも新テストの中身に不透明な部分が多いこともあって、報道は総じて扱いが小さく、批判的なトーンも強かった。この問題を、どう考えればいいのだろうか。
 同会議は、2014年12月の中教審「高大接続改革答申」と、翌15年1月の文科省「高大接続改革実行プラン」を受けて、同年3月に発足した。答申は、とかく「大学入試改革」を打ち出したものと言われることが多いが、答申の正式名称にもある通り「高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革」であり、しかも入学者選抜は「入試」にとどまらない。当時の中教審会長だった安西祐一郎・システム会議座長は「入試改革について聞きたい、と言うなら取材は受けない」とさえ語っている。この一体改革を「高大接続システム改革」と位置付けることが、報告書でも明記されている。
 ということは高校改革や大学改革、さらには「入試」以外の入学者選抜についても、さぞ突っ込んだ議論が行われたろう……と思いたいところだが、具体的な検討を「新テスト」「多面的な評価検討」の二つのワーキンググループ(WG)に委ねたこともあり、発足後しばらくは中教審の蒸し返しのような論議が続いた。
 そんな中で出てきた9月の中間まとめは、学力評価テストから「合教科・科目型」「総合型」の出題という文言が消え、「高等学校学力評価テスト(仮称)」も現行学習指導要領下(2023年度まで)は入学者選抜の資料に使わないなどとする、答申から後退するものになった。その後、関係者ヒアリングなどを経て、学力評価テストの年複数回実施を当面見送るなど、更に後退した。
 「一体的改革」を強調しながら、高校教育と大学教育に関しては、極端に言えば既に進行している初等中等教育の教育課程改革と高等教育の「三つの方針(ポリシー=P)改革」を整理しただけで、個別大学の選抜改革に至っては実質WG から1回報告を受けただけで議論らしい議論はせず、実行プランでは「順次実施」するはずだった一般・推薦・AOの入試区分廃止も、新テストに合わせた2021 年度入試に先送りしてしまった。
 肝心のシステム会議自身が「入試」改革に終始してしまった――と評したら厳しすぎるだろうか。結局は現状でできることだけで、ターゲッ卜イヤーである2020年度を迎えるしかない。あえて時代がかった死語を使えば、システム改革は「永続革命」だ、ということか。


(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「株式会社立広域通信制高校」

 高校就学支援金を目当てに就学意志のない既卒者などを在籍させていたことで問題になっていた三重県伊賀市の「ウィッツ青山学園高校」で、教育面でも不正を行っていたことが明らかになった。駅から学校まで歩いて「体育」、バス内で洋画を観て「英語」、買い物の釣り銭計算で「数学」の授業にカウン卜するなど、驚くべき実態だ。同高は新年度の生徒募集を停止することを決めており、文部科学省は卒業認定が間に合わなかった生徒に、特例で大学などへの入学資格を認めるなどの措置を取ることにしている。この問題を、どう考えればいいのか。
 重要なのは、同高が構造改革特区の認定を受けた株式会社立の広域通信制高校だということだ。小泉純一郎政権下の規制緩和・自由競争路線に乗じて認定された「学校設置会社による学校設置事業」は、公教育制度の範囲内では十分カバーできない柔軟な教育が期待できる一方で、教育の質の低下や、設置者が営利追求に走るのではないかといった懸念が、当初からあった。ウィッツの事例は、その典型のようなものだ。
 特区認定を受ける過疎地にしてみれば、廃校舎に学校が入り、たとえスクーリングという一時期でも多数の生徒が集まれば、地域活性化につながると期待をかけるのも無理はない。しかし市町村教委には、高校を指導するノウハウもスタッフもない。実質的な監督者のいない野放し状態の中で、やりたい放題の「経営」が行われていた。同高側は、不正な生徒募集を行っていたのは別会社が運営するサテライト校だったと弁明していたが、企業の論理から言っても通用する話ではあるまい。
 学校のことであるから「文科省の責任は重い」と言いたくなるところだが、経緯を考えれば、そうではない。文科省の抵抗を押し切って導入されたものだからだ。某教育専門誌のコラムで、現役文科官僚とおぼしき匿名執筆者も「もともと文科省は反対だった。最後は政治の力で無理やり認めさせられた」と書いていた。
 指導・助言を教育行政の旨とする文科省に、学校を直接監督する権限はない。一方で、機会あるごとに広域通信制高校の在り方を問題視する発言を繰り返していた。そうした批判にもかかわらず、ずさんな学校経営を続けていた株式会社に責任を帰すべきだろう。
 さらに言えば、圧倒的な国民の支持を得ていた政権の威を借りて株式会社立学校を推進した一部省庁や政治家の責任は重い。とりわけ旗振り役の中心だったにもかかわらず、文科相在任中に何ら具体的な手を打たなかった下村博文氏の政治的責任は、改めて問われるべきだろう。公教育に関しては特筆すべき見識を示したのに、と残念でならない。


(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

基本図書セット2017のご案内

 教育図書出版会では、学校の先生方へ教育現場に役立つ書籍を提供させていただくために「基本図書セット」を企画しております。
 2017年3月には改訂指導要領の告示が行われます。10年に1度の改訂ですので、教育書を拡販するチャンスとなります。
 書店様におかれましては、店頭活性化のため、ぜひ、本セットをご注文くださいますようお願い申し上げます。

「基本図書注文書」はこちらからダウンロード出来ます→ 

分野別のセットについては、以下のページからご覧ください。
 ・Aセット(学校・学級経営・教科教育)
 ・Bセット(教育相談・教育学)
 ・Cセット(保育・家庭教育)
 ・Dセット(特別支援教育)

ミニフェア「教科教育」

 新学期の新刊需要も一段落して、これから各教科の実践的書籍や教育技術に関するロングセラー書籍の動きが増えてきます。ぜひ、フェア展開あるいは棚の補充用にお役立てください。

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「組み体操」

 各地の学校の運動会などで行われている「組み体操」の在り方が問題になっている。高さを制限する地方教育委員会が続出しており、ようやく文部科学省も重い腰を上げた。ここには、学校管理と学校安全、子どもの体力・運動能力、さらには地域・保護者との関係まで、微妙な課題がからんでいる。
 以前にも「ピラミッド」や「タワー」が崩れた骨折事故などを受けて、組み体操を中止する学校が相次いでいた。しかし社会問題として大きく浮上したのは、教育社会学者の内田良・名古屋大学大学院准教授が2014年5月、ヤフーニュースに緊急提言を投稿してからだったろう。内田准教授は、日本スポーツ振興センター(JSC)の災害共済給付の統計から柔道事故の危険性を指摘したことで注目され,その後もその後も転落事故や「2分の1成人式」などの問題を次々と指摘している。
 組み体操は、それが児童・生徒に困難を乗り越えた大きな達成感を生み出すだけでなく、参観する保護者や地域住民にも感動を呼ぶ。「来年はもっと大きく」という願望が、肥大化を生んできた。内田准教授の試算によると、中学校3年生男子の10段タワーには最下段の生徒に最大207キロの負荷が掛かるという。しかも昔に比べれば子どもは「ひ弱」になっており、経験則が通らなくなっているのも事実だ。JSCによると、統計のある2011年度以降、毎年8000件を超える事故がある。
 一方で組み体操は、学習指導要領で指定や例示されているものではない。あくまで各学校が、教育活動としてふさわしいと判断して実施しているものだ。法律上、学校の安全確保は校長や学校設置者の責務である。文科省語が学校現場の「箸の上げ下ろし」にまで口を出すのは、指導・助言を原則とする教育行政にはふさわしくない。
 ただ、その危険性がかなり高いことが明らかである場合には遠慮なく指導・助言を行うべきことも、また当然だ。指導要領上の定めに関してではあるが、2012年度からの中学校武道必修化に際して、文科省は都道府県教委などを通じて柔道の安全管理を図るよう通知している。
 気になるのは、文科省が対策に乗り出したのが、超党派の議員が集会を開いた直後だったことだ。元高校教員・レスラーの馳浩文科相も、教育行政に通じ過ぎているだけに判断が遅れたのか。しかし今になって「(重大事故が)1件もあってはならない」(2月15日の衆院予算委答弁)と言うのには、違和感を覚えなくもない。
 いずれにしても年度内に示される方針が注目されるが、これを機会に各学校でも、教育活動の在り方全般に恒常的な検証が必要だろう。前例主義は、もう通用しない。


(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「教員は学校で育つ」

 昨年12月末の中央教育審議会総会で、3本の答申が馳浩文部科学相に提出された。日刊紙の記者が記事を書くとしたら、見出しが立ちやすく、読者の関心も引きやすい「チーム学校」を中心にするのは無理からぬところだ。「学校と地域の連携・協働」は地方創生の観点で時流に乗っているし、真面目に考えれば「社会に開かれた教育課程」の観点からも重要なのだが、実現可能性という点で眉唾だ――と言ったら、学社融合に熱心に取り組んできた関係者に怒られるだろうか。事実、日刊紙レベルできちんと紹介していた記事はなかったように思う。地味だけれど実は重要で、今後の影響力も多いと思われるのが、「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」ではないだろうか。果たして分かっている記者だけがきちんと取り上げていたようだが、おそらく一般の目には素通りされることが多かっただろう。
 「学び続ける教員像」は民主党政権下の2012年8月答申で打ち出されたものだが、ある意味で今回の答申はその延長線上にある。教員政策は時々の政権に左右されやすいのに、高大接続改革と同様、政権の思惑を超えて時代が要請する改革なのだ、ということの表れとも言える。
 第2次ベビーブーム時の大量採用世代が大量退職期に入って久しく、学校では既に若い世代の教員が増える一方、薄い中堅層の多忙化で、戦後営々と現場で培われてきた技術や経験が継承されない危機が続いている。採用増に対応した私立教員養成学部・学科の新設や教職大学院の増加といった背景はあるものの、大学の役割が高まらざるを得ないのは事実だ。
 一方で、戦後掲げた開放制原則だけで教員養成が完結する牧歌的な時代は、とうに過ぎている。既に私学であっても、地域の教育委員会等と連携して、学生を日常的に学校支援ボランティアに送り込むことも含め、現場の実態をよく理解した教職志望者を育てない限り、たとえ国立だろうと信頼を得ることも、学生の教員採用を勝ち取ることもおぼつかない。
 教員になってからも学び続けるためには、初任者研修や経験者研修の体系的な見直しも不可欠だ。教員免許更新講習と十年経験者研修との整合性という積年の課題もある。そこで打ち出されたのが「教員は学校で育つ」という考え方で、これにより養成・採用・研修を通じて教員の学びを支援しよう、というのが答申の理念だ。
 具体策もよく練られている。▽各地域で教委と大学等が「教員育成協議会」を設置する▽教員採用試験の共同作成も検討する▽校内研修推進のための支援――などだ。事情通には、一時は廃止確実とみなされていた独立行政法人教員研修センターがいつの間にか「全国的な拠点」として期待を集めていることに目を見張るのだが、時代に合わせて新しい役割を見いだしたセンター関係者の努力の方をこそ称賛すべきだろう。
 次期学習指導要領も追い風となっている。アクティブ・ラーニング(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)に本気で取り組もうとするなら、現職教員を全員、大学院などで学び直しさせるくらいの取り組みが本来は必要だろう。もちろん、それには学問体系を背景とした教科を中心に教員養成を行ってきた大学側の在り方も根本的に問い直さなければならないものである。その意味でも、関係者が手を携えて養成・採用・研修の一体改革に取り組み、教員志望の段階から採用を経て定年退職・再雇用に至るまで、生涯学び続ける教員を支援していくことには意義がある。
 そうであればこそ、さほど教員の学び直しに効果がなく、弊害も少なくない更新制が、なぜ見直されないのだろう……と、個人的には残念に思わないでもない。政権を超えた課題を解決するにも、政権の顔色をうかがわなくてはならないのは、高大接続改革とも同様だ。


(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「高校生の政治的活動」

 文部科学省が、高校の政治的教養の教育と高校生の政治的活動に関し、学校現場にはその扱いをめぐって戸惑いが広がっている。
 同種の通知は1969年以来。というより、今の今まで69年通知が46年間も生きていたのだから驚きだ。69年といえば、1月の「東大闘争」の余波で東京大学の入試が中止となり、学園紛争が大学だけでなく高校でも激化していた。69年通知でも「最近、一部の高等学校生徒の間に違法または暴力的な政治的活動に参加したり、授業妨害や学校封鎖などを行つたりする事例が発生しているのは遺憾」としている。現在とは隔世の感がある。
 筆者が高校生だった80年代前半、3校以上の生徒が集まってはならないと校則で定める「三校禁」が一部の県で残っており、そうした校則も69年通知を根拠とするものだった。一方で当時の高校生には、無気力・無関心・無責任の「三無主義」も社会問題となっていた。通知後10年を経てそういう状況だったのだから、それから更に30年以上、今や69年通知は有名無実化していた。
 寝た子を起こすきっかけとなったのは、言うまでもなく選挙権年齢の18歳引き下げである。69年通知で高校生の政治的活動を制限していたのは、未成年であることが主要な根拠であった。しかし18歳の高校生は投票権を得るのだから、むしろ政治参加が奨励されなければならない。
 しかし「2015年通知」は、基本的に69年通知を踏襲していると言える。公職選挙法の改正で高校生が「国家・社会の形成に主体的に参加していくことがより一層期待される」とする一方、改正教育基本法14条2項の「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」という条文を盾に、学校には政治的中立性を確保することが求められているとし、高校生に対しては、判例などを踏まえ、校長が「必要かつ合理的な範囲内で、在学する生徒を規律する包括的な権能を有するとされている」と指摘して、校内での政治的活動を禁止した。
 もちろん政治参加を奨励しているのだから、放課後や休日等に校外で行う政治的活動には制約が付けられるはずもない。通知でも「家庭の理解の下、生徒が判断し、行うものであること」と確認している。これをもって「校外は解禁」と報道した新聞も少なくない。
 ただし通知では、違法なものや暴力的な政治的活動はもとより、①生徒が政治的活動等に熱中するあまり、学業や生活などに支障が出る場合②他の生徒に支障が出る場合③生徒間で政治的対立が生じるなどして支障が出る場合――には「必要かつ合理的な範囲内で制限又は禁止することを含め、適切に指導を行うことが求められる」としている。事実上の制限をしている点では、基本的に69年通知の方針と変わりはない。
 もっとも、全共闘運動のような「暴力的」な政治的活動が再燃するかというと疑問だ。文科省も、あくまで一般論を示した通知文だからこうなるのであって、「学校は警察ではないのだから、校則で『〜してはならない』と一々列挙するわけにもいかない」と説明している。要は生徒の実態に応じて、各学校で適切に判断してちょうだいね――と、学校現場に委ねているのだ。
 校外まで生徒の政治的活動を禁止して、訴えられでもしたらどうするのか。そんな現場の心配は尽きないだろう。しかし通知にもあるように、何より重要なのは高校生の政治参加意識を醸成させることであり、そのための政治的教養の教育だ。教員の政治的中立性の確保と同様、委縮してばかりでは高度専門職としての教員の名がすたる――と言っては、きれい事に過ぎるだろうか。しかし、だからこそ専門性の一環としての生徒指導や主権者教育の在り方が改めて問われている、とも言えよう。


(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

ミニフェア「通知表・指導要録」

保育園では新年が明けると、保育士さんはもちろん、親御さんもこどもの成長が気になってきます。こうしたことをきっかけに保育関連書への興味が広がる人もいます。
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「所得連動型奨学金」

 マイナンバー(社会保障・税番号)の通知が始まったことを契機に、本格的な所得連動返還型奨学金制度の導入を検討する文部科学省の有識者会議が発足した。一般紙でも一部だけが報じた地味なニュースだが、重要な意義を含んでいるように思う。
 まずは先に「本格的な」と書いたことから注釈が必要だろう。既に民主連立政権下の2012年度から「所得連動返還型無利子奨学金制度」が導入されている。それ自体は非正規雇用に就かざるを得ない新卒者などにとっては朗報だったが、貸与を受けた本人が卒業後に年収300万円を得るまでは返還を猶予する、という単純な制度設計で、300万円を1円でも超えれば満額の返済が迫られるという課題も依然抱えている。所得額に応じて返還額も変える「本格的な」制度は、貯蓄も含めた財産が正確に把握できるマイナンバーの導入を待って検討するとされていた。それが、ようやく2017年度進学者からの導入に向けて動き出した、というわけだ。
 とはいえ、論点は山積している。まずは、年収幾らまで返還を猶予するか。その上で、どのように年収に応じて返還額を設定するか。さらに、完済するまで無期限に返還期間を延長するのか、それとも一定期間で「帳消し」にするのか。「借りたものは返す」のは当たり前だが、利用の仕方によっては800万円近くもの“借金”を背負う不安から奨学金を受けることをためらい、進学そのものを断念することがあってはならない。一方で返せる当てもないのに、いつまでも債権が消滅しないのでは、本人に負担なだけでなく、機構側の管理コストもかさむ。貸し倒れが増加し、国費で補充する事態を招くより、少額からでも返還してもらった方が制度の維持につながる、という判断もある。どういう制度を採れば「奨学」につながるか、という、なかなか深い論議が必要だ。
 今回の有識者会議の議論とは直接関係がないが、さらに一歩進んで、教育費負担の在り方ということも前提に考える必要があろう。18歳人口の4人に3人が専門学校も含めた高等教育機関に進学し、かつ半数は大学・短大を選ぶ「ユニバーサル段階」にあっては、授業料無償化など無理な話だ。改革が迫られる大学には、今後も教育コストがかさむ。一方でグローバル人材やイノベーション人材が求められる中、高等教育人材の増加は、個人だけでなく社会にとってもメリッ卜がある。あまりにも家庭に依存し過ぎてきた東アジア的な教育費負担の構造を、社会の「教育投資」と捉えて軽減する方向に転換すべきだとの考え方も成り立とう。第3次安倍改造内閣が「1億総活躍」を掲げるなら、不可欠な条件整備ではないか。


(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「脱教科主義」

文書にもない言葉をキーワードに挙げて、誠に恐縮である。しかし、次期学習指導要領改訂の基本方針を示した中央教育審議会の教育課程企画特別部会がまとめた「論点整理」をどう表現しようかと熟慮に熟慮を重ねた結果、学校現場の影響を考えた時これではないか、と思い至った。
 本来なら本文を引用して「育成すべき資質・能力」「指導要領の構造化」、あるいは公式キャッチフレーズ候補として急浮上してきた「社会に聞かれた教育課程」を挙げるべきだったろう。ただ、これらは分かる人には分かっても、分からない人には全く分からない。教育課程改革の理解には、それだけ教育現場にも大きな格差が生じているように思う。しかも、目先の課題に追われて現行指導要領をこなすだけで手いっぱい、という教員が大多数を占めているのが現状だ。
 諮問にあった「アクティブ・ラーニング」(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)は、既に小中学校のみならず高校でも関心が高まっている。しかし論点整理では「カリキュラム・マネジメント」と合わせて「車の両輪」としている点が見逃せない。
 改訂を重ねるごとに増してきた教科の独自性に待ったをかけ、学問体系に裏打ちされた従来の教科内容(コンテンツ)中心のカリキュラムから、資質・能力(コンピテンシー)ベースのカリキュラムへと構造転換を図る。そのために教育目標・内容、指導方法、評価の在り方を三位一体で改革する――。それが改訂の肝であり総論だ。あえて言えばALは指導方法の改善と資質・能力育成の一手段にすぎないし、高校の「公共」など新科目や小学校英語の教科化なども各論でしかない……と言ったら、さすがに言い過ぎだろうか。
 それでも、論点整理に「教科横断」が何度も強調されていることは間違いない。学校段階という縦串(本文では「縦のつながり」)と、教科横断という横串(同「横きのつながり」)をクロスさせ、学力の3要素に従って育成すべき資質・能力を構造化する、というのが眼目だ。もはや教科主義・教科エゴは許されない。
 こう書いても、ピンと来ない読者はおられよう。しかし中教審答申が出てから、あるいは新指導要領の告示と指導通知が出てから、あるいは解説書が出てから、あるいは教科書が出てから驚いても、その時には遅い。今から理論・実践研究を深めなければ、とても21世紀型教育に間に合わない。
 国や自治体にも、現場がじっくり取り組める条件整備を求めたい。というより、それなしには無理と思えるほどの大改革だ。


(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「2018年問題」

 8月のお盆前といえば、教育界では文部科学省から学校基本調査の速報が発表されるのが恒例になっている。同時に日本私立学校振興・共済事業団から私立大学・短大の「入学志願動向」も発表される。今年の結果を、どう見るべきだろうか。
 基本調査によると、現役高校生の大学・短大進学率が54.6%で過去最高を更新。入学志願動向では、定員割れを起こした私大が前年度より15校減り、約3ポイン卜減の43.2%にとどまった。
 実質的な「大学全入時代」を迎えて近年では学生確保に悩む大学が少なくなかったから、今年度の結果は結構なことだ――素人目にはそうも思える。しかし大学関係者に、楽観ムードはない。むしろ近年、危機感を持ってささやかれているのが「2018年問題」だ。
 2018年問題とは、主な大学等入学年齢である18歳入口が2018年度に再び減少に転じることで、大学経営にも大きな影響力が出る事態を指す。実はここ数年、18歳人口は119万〜120万人で落ち着き、2017年度まで続く。今春、大学・短大の現役進学者が1万7千人増えたのも、前年に比べ18歳入口が1万9千人増えたという側面が大きい。浪人を含めると、実際の入学者は9千人増でしかない。要は一時的な現象であり、厳しい中でほっと一息つけたという程度の話だ。そして2018年度以降は118万人、117万人、117万人、114万人、110万人……と年々減っていき、2024年度には106万人、2031年度には100万人を割ると推計されている。
 大量の移民を受け入れでもしない限り、18歳入口が急激に増えることはない。少子化対策が奏功しても、効果が出るのは18年後だ。大学が採るべき道は二つしかない。一つは、より多くの18歳に大学等ヘ進学してもらうこと。もう一つは、18歳入口だけを当てにせず、「社会人の学び直し」に活路を見いだすことだ。いずれにしても、大学教育の改革が不可欠になる。既に多くの大学が2018年問題を見越して学部改組などの改革に奔走している。
 文科省が国立大学に人文社会科学系の見直しを求めたことに大学関係者の猛反発があったが、背景にはそうした大学の在り方の問い直しがあることも忘れてはいけない。高大接続改革も、18歳入口の動態の下で求められる改革だと言うことができる。
 日本全体が人口減少期に入る中で、今後も活力ある社会・経済を維持していくための人材育成と、そのための高等教育機関はどうあるべきか。そうした大きな視点から状況を冷静に見つめなければ、今後の教育の姿も、教育政策の展望も見えてこない。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「デジタル教科書」

 文部科学省が「デジタル教科書」の位置付けに関する有識者検討会議を発足させた。2014年6月に閣議決定された政府「規制改革実施計画」に沿ったもので、16年中の取りまとめを目指している。しかし、これまで紙ベースが前提だった「教科用図書」(学校教育法)のデジタル化を正式に認めるには、課題が山積している。
 「デジタル教科書」は既に教科書会社の商品としても広がっているが、厳密に言えば「指導者用デジタル教科書」(11年4月の文科省「教育の情報科ビジョン」)であり、法的には「副教材」扱いだ。「主たる教材」(教科書発行法)として学校に使用義務が課せられている「教科書」とは遣う。今回の検討会議は、「学習者用デジタル教科書」を法律上の教科書にできないか可能性を探るのが、主眼となっている。
 音声や動画など多様なコンテンツ(内容)が提示できたり、リンクを張ったりも自在にできるのが、デジタル教科書の特長だ。しかし正式な「教科書」になった時、そこまでも検定対象とするのか。リンク先のホームページが改ざんされないとも限らない。そうした困難を乗り越えてデジタル版も教科書と認めたとして、従来の紙の教科書は残すのか。学習者用デジタル教科書には1人1台の情報端末が必要になるが、機器の費用負担をどうするのか。供給方法はオンラインを通してか、USBなどを配布するのか。だいたい健康に悪影響が生じたり、情報機器への依存症を助長したりする懸念はないのか……等々、ハードルは多い。
 義務教育用の教科書は無償給与されており、国の購入予算は約412億円。それも1冊百何十円から何百円と、雑誌以下の定価に抑えられてのことだ。デジタル教科書に多様なコンテンツを載せるのはいいが、それだけコストは掛かる。著作権一つ取っても、現在の指導者用デジタル教科書でさえ紙とは別の著作権料が発生し、オンラインで提供するには配信量が別途必要になるという。そもそも家に持ち帰って予習・復習するには、家庭や地域でインターネット環境が整備されていることが必須だ。端末機器の料金設定も含め、国のみならず企業など社会全体で取り組まなければならない課題でもある。
 それでも知識基盤社会と言われる中、情報機器を使いこなして仕事や社会生活を営まなければならない時代に突入していることは疑いない。そうした時代に対応した「21世紀型スキル」を身に付けさせるためにも、デジタル教科書の導入は避けて通れないだろう。正式な教科書とするには現在のところ最速でも2020年度からとなるが、「それでも遅い」という民間団体の指摘もある。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

ミニフェア「夏休み直前!読書と読書指導・自由研究」

夏休みの宿題でもっとも苦戦するのは、1位「読書感想文」、2位「自由研究」だそうです。
先生方にとって、子どもたちが興味を持って宿題に積極的に取り組めるテーマの選定に役立つ書籍を集めました。

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専門職業大学

 実践的な職業教育を行う高等教育機関の制度化を――。昨年7月の教育再生実行会議第5次提言を受けて、下村博文文部科学相がこう中央教育審議会に諮問した。高等教育で新たな学校種が創設されるとしたら1961年の高等専門学校(高専)以来だし、学校教育法第1条で定める学校(いわゆる1条校)に限らなければ75年の専門学校(専修学校専門課程)以来だ。ただ、諮問に至った経緯については非常に解説のしがいがある。
 実行会議第5次提言が「小中一貫教育学校」(後に「義務教育学校」として法案化)と共に学制改革の目玉として掲げたのが「実践的な職業教育を行う高等教育機関」だった。大学や短大の教育は学術研究が基になっているし、高専は中卒後の5年一貫教育が特色だし、専門学校は教育の質が担保されていない――というのがその理由だ。提言を受けて、文部科学省が有識者会議を設置。諮問を控えた3月末に「大学体系の中に位置付ける方向性」を打ち出し、「専門職業大学」「専門職大学」といった名称の候補も挙げた。本稿の表題もここから取ったが、今のところ正式には「実践的な…高等教育機関」である。
 実は、こうした提言は初めてではない。2011年1月の中教審答申で「職業実践的な教育に特化した枠組み」の検討が提言されたことがある。その後、財政当局からの反対もあって14年から専門学校に文科大臣認定の「職業実践専門課程」が創設されたと言ったら、意図が透けて見えてこようか。
 先に言及したように専修学校は学校教育法1条ではなく、現在は124条以降に規定されている。大学と違って設置認可の権限は文科大臣ではなく、私立高校などと同じ都道府県知事にある。都道府県が補助金を出すことはあっても、国の私学助成の対象にはならない。専門学校関係者にとって「1条校化」は悲願だが、かといって設置認可が厳格化されれば、地域の人材ニーズに対応して機動的に改組が行えるというメリッ卜を失うことになる。だからこその「新しい枠組み」だったのだが、それも頓挫したため改めて「高等教育機関」の道を目指した、というわけだ。大学や短大からの移行もあり得るとしているが、主なターゲッ卜は専門学校とみて間違いない。中教審総会では早くも私学助成枠をめぐって、さや当てのような発言が交わされていた。
 ところで以前、「G(グローバル)型大学・L(ローカル)型大学」といった提言がネットや雑誌をにぎわせたことがあった。先の有識者会議で委員の冨山和彦・経営共創基盤CEOが配布・提案したのがきっかけだったが、実際の会議で正面から取り上げられたという形跡はない。

 (渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

英語力

 文科省が高校3年生を対象に実施した「英語力調査」の結果は、日本の英語教育の実態を明らかにしたものとして注目される。ある意味では当然とさえ思えるが、今後の教育改革を考えた時には深刻な結果とも言える。
 調査対象となった2014年度の高3といえば、小学校に入学したのが2003年度。前年度の02年度から全面実施となった学習指導要領では「総合的な学習の時間」の一環で外国語会話等が“解禁”され、03年3月には文科省が「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」を策定した。その後も各自治体で英語教育導入が進んだことを考えれば、英語力はアップしてよかったはずだ。
 しかし実際には、第2期教育振興基本計画で掲げた「卒業時に英検準2〜2級程度」に及ばないばかりか、多くが中卒程度とされる英検3級レベル以下であることが分かった。とりわけ4技能のうち「話す」「書く」が低い。しかも「英語の学習が好きではない」との回答が半数を超えている。
 英語教育の改善は、次期指導要領改訂の重要な論点だ。既に外国語活動を小学校中学年に前倒しし、高学年では教科化する方針も決まっている。しかしスタートラインが先に見た調査結果だとすると、課題は山積している。
 ところで先に「英検」の例を出したが、実際には「ヨーロッパ言語共通参照枠」(CEFR=セファール)に基づくA1〜B2レベルで結果が示されている。“国際標準”を意識してのことだ。英検はもとよりTOEFLやGTECなどの各種検定試験も独自にCEFRとの対照を示しており、昨年末に発足した検定試験団体の連絡協議会では更に対照表を精緻化して社会的認知を図っている。
 そして今後の大学「入学者選抜」改革では、英語の試験を検定試験で代替しようとする動きがある。大学入試センター試験ではペーパーテストにリスニングが加わった程度だが、各種検定なら4技能がバランス良く測定できるからだ。グローバル人材の育成に生き残りを懸けている大学側の方が、切実だとも言える。
 英語嫌いが多いのも、「話す」「書く」が弱いのも、コミュニケーション能力育成という方針にもかかわらず、実態は依然として「入試」中心の英語教育が行われてきたからだという側面もある。しかし指導要領はもとより、大学入試自体が変わろうとしている。一方で、海外で仕事をしたり会社内で外国人社員と働いたりするだけでなく、観光地や量販店に外国人が押し寄せているのは日常の光景になっている。そもそもクラスにも1人や2人、外国由来の児童生徒がいることは珍しくない。グローバル化対応に、もう逃げは許されないのだ。

 (渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

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ミニフェア「通知表・指導要録」

 そろそろ一学期の学力評価を準備する時期になりました。学期末試験の結果から先生方は一学期の授業の分析と二学期に向けての具体的な改善案を考えていきます。教育図書出版会では通知表の記入方法から授業実践の方法までの多様な書籍を紹介いたします。

 

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「主権者教育」

 20歳からだった選挙権年齢を18歳に引き下げる公職選挙法改正案が、いよいよ国会に提出された。今国会で成立すれば、2016年夏の参院選から適用される公算が大きい。高校在学中に投票権を得る生徒も出てくるわけで、それも含めて急浮上しそうなのが、主権者教育だ。
 選挙権年齢の引き下げはもともと憲法改正の発議問題とセットで提言されていたもので、昨年6月には国民投票年齢を4年後に18歳以上へと引き下げる改正法が施行されている。法案提出に先立つ2月17日、改憲に意欲的な安倍晋三首相は参院本会議で「あらゆる機会を通じて主権者教育を進めていく」と述べていた。
 その4日前、東京都教育委員会が新教科創設の方針を発表した。新教科「人間と社会(仮称)」は道徳教育とキャリア教育を一体化するものだというから、一見すると関係ないように思うかもしれない。せいぜい、道徳教育の強化を狙う政権にすり寄ったか…というくらいか。
 しかし昨年11月の学習指導要領改訂諮問にあった、国民投票年齢や選挙権年齢の引き下げを視野に入れた「国家及び社会の責任ある形成者となるための教養と行動規範や、主体的に社会に参画し自立して社会生活を営むために必要な力を、実践的に身に付けるための新たな科目等」の検討要請と比べたら、どうだろう。
 都立高の新教科が「道徳的価値を深める学習」とともに「選択・行動に関する能力を育成する学習」を一体的に行うとしているのは、その先導的な役割を担うものではないか。新教科は現在の「奉仕」を発展的に解消して創設されるが、「奉仕」自体が第1次安倍内閣の「教育再生会議」が高校で奉仕活動の必修化を提言したことと連動していたのが思い起こされる。
 かねて高校教育関係者の間には投票年齢とともに、民法改正まで連動して18歳成人になるのではないかとの懸念があった。それがいよいよ、現実のものとなりそうだ。高校段階で主権者としての判断や行動ができるようにすることが、既に98%が進学する国民的教育機関としての役割として求められている。
 もともと高校には「公民」科がある、と反論したくなる向きもあろう。しかし、それでは若者の低投票率にみられる現実の政治的無関心をどう説明するか。無味乾燥な知識の暗記だけを求め、実社会に活用できる思考力・判断力・表現力に結び付いていないとの批判を受けても仕方がない。目くじらを立てるより、これをシチズンシップ(市民性)教育の好機と捉えてはどうだろう。昨年6月の中教審高校教育部会の審議まとめでも、高校教育のコアの一つに「市民性」を挙げていた。

 (渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

ミニフェア「教科教育」

 新学期の新刊需要も一段落して、これから各教科の実践的書籍や教育技術に関するロングセラー書籍の動きが増えてきます。ぜひ、フェア展開あるいは棚の補充用にお役立てください。

 

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「考える道徳科」

 政府の教育再生実行会議が提言し、中央教育審議会が答申した道徳の教科化について、文部科学省が学習指導要領の一部改訂案などのパブリックコメント(意見公募手続)を行っている(3月5日まで)。細かい字句修正はともかく、大筋で変わることはないだろう。道徳の時間を答申の仮称通り「特別の教科 道徳」(道徳科)に格上げするものの、児童生徒に考えさせることで道徳性を養うという“考える道徳科”の方向性を鮮明にしている。教科書の発行を待って小学校は2018年度、中学校は19年度から実施するが、学校の判断で15年度から先行実施できる。
 小学校の場合、改訂案では総則で道徳教育の自的を「自己の生き方(中学校は『人間としての生き方』)を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うこと」と規定。従来の目標は留意事項として残している。配慮事項としては従来の道徳の時間の記述を移行させつつ、いじめ防止や安全確保、全体計画や諸活動などの情報の積極的な公表を求めている。
 その上で道徳科の目標を、小学校の場合「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え(中学校では『広い視野から多面的・多角的に考え』)、自己の生き方(同『人間としての生き方』)についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」とした。内容には「善悪の判断、自律、自由と責任」(小学校)、「社会参画、公共の精神」(中学校)などキーワードも提示しながら整理している。
 注目されるのは、内容の取り扱いで「自らが考え、理解し、主体的に学習に取り組むことができるようにすること」「学んだ内容の意義などについて考えることができるようにすること」など「考え」させる学習を強調していることだ。「多様な見方や考え方のできる事柄について、特定の見方や考え方に偏った指導を行うことのないようにすること」とさえクギを刺している。
 次期指導要領の全面改訂では、課題発見・解決能力を育成するため主体的・協働的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」の導入も検討されている。今回の道徳科は、そうした趣旨を先取りしたものと言えよう。下村博文文科相も当初から「人間学」のようなもの、という考えを表明していた。決して戦前の「修身」復活ではあり得ないはずだ。そのためにも教え込み型ではない工夫された教科書と、豊かな授業実践の研究・研修が求められる。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

「教育の大改革」

 今回は1月休刊のため2カ月分を扱うが、本来は各月で「指導要領の構造改革」と「高大接続改革」の二つを詳しく取り上げたいところであった。ただ、両者を合わせて下村博文文部科学相が「わが国の教育全体の大改革につながるもの」(11月21日の記者会見など)との認識を示しているのは、決して政治家のハッタリではない。いずれも連動した世界の流れから一体で要請されている改革であることに、注意する必要があろう。
 まず、学習指導要領の全面改訂である。これまで教科の内容について「何を教えるか」「何を学ぶか」ばかりが中心だった教育の在り方を、教科横断的に育成すべき資質・能力を構造化することで「何ができるようになるか」へと転換し、そのために教育目標・内容、学習・指導方法、学習評価を一体で改善しようというものだ。
 これまでの全面改訂といえば、教科間の授業時数の奪い合いや、教科内での内容の足したり引いたりに終始してきた、と言ったら語弊があろうか。「新学力観」や「生きる力」など重要な能力観の提起がありながら、抽象的な目標にとどまり、指導の具体化は学校現場に委ねてきたため、必ずしも理念が浸透せず、成果もきちんとエビデンス(論拠)に基づいて評価されなかったため、結果として目指す能力が身に付いたかもおぼつかなかった。そうした指導要領の根本的な弱点が、いわゆる「ゆとり教育批判」による混乱を生んだ側面もあったたろう。
 今回の改訂では、まず学校教育全体を通じて育成すべき21世紀に求められるスキルは何かを確定した上で、それを各教科に割り振ることになる。その教科でなぜその内容を扱うのか、根本的な問い直しが必至だ。
 一方で「入試が変わらなければ教育は変われない」とよく言われるように、大学入試の在り方が高校以下の教育を規定してきたことも事実だ。それを今回の答申では、高校教育・大学教育・大学入学者選抜(≠大学入試)を一体で捉えた「高大接続」を一気に改革することを目指している。中教審の安西祐一郎会長は「高大接続改革は入試改革ではない」とさえ強調している。
 いずれも「知的基盤社会」と呼ばれる21世紀に対応して、スキル重視の教育課程に転換するという世界的な潮流に対応するものである。そこのところを理解せず、やれグローバル化への対応だの「教育再生」だのと単純に捉えていては本質を見失うし、改革の是非についても正しい議論ができないだろう。
 もっとも管見の限りでは、そうした点について正鵠を射た報道が極めて少ないのが残念だ。文科省や新聞・テレビはもちろん、出版の役割にも大いに期待したい。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

ミニフェア「学級経営」

 学級経営には様々なコツがあります。行事と授業の連続の中で、そのコツを上手に使っていくノウハウが、今回のミニフェアの書籍にはつまっています。学校の年度最後の締めくくりに懸命な先生方にオススメです。

 

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「35人学級」

 財務省が公立小学校1年生の35人学級を40人学級に戻すよう提案したことが、波紋を広げている。
 10月23日の朝刊で一部報道があったが、正式に案が示されたのは同27日に開かれた財政制度等審議会の財政制度分科会。「小1プロブレム」の解消などを目指して2011年度に35人学級へと引き下げられたにもかかわらず、12年度の文部科学省「問題行動調査」ではいじめと暴力行為で小学校全体の件数に占める1年生の割合が少し増加。「明確な効果があったとは認められず、厳しい財政事情を考えれば、40人学級に戻すべきではないか」というのが、財務省の主張だ。
 これに対して、Yahoo!の意識調査(10/23〜11/12)では「40人学級に戻すべき」30.9%に対して「35人学級を続けるべき」69.1%と圧倒的に現状を支持。東京都品川区の保護者が始めたインターネット署名「こどもたちの未来を守ろう!35人学級の存続を!」(吉川博・財政審会長宛て)には2万5000人を超える賛同があった(11/15現在)。下村博文文部科学相が「35入学級の方が望ましいというのは、教育関係者100人が100人みんな言うことだ」(10月24日の記者会見)と猛反発すれば、与党自民党の文部科学部会でも反対決議がまとまった。
 時事通信社『内外教育』によると、こうした総スカンに財務省サイドも「完全にアウェー」(政務三役)、「問題提起の一つにすぎなかったのに、感情論で騒がれてしまった」(主計局中堅)と沈滞ムード。文科省内には「本気で言っているわけじゃないだろう」と冷静な受け止めが大勢だという。
 ただ財政審での提言が、政府が実現を目指す幼児教育の段階的無償化のための財源(2015年度概算では事項要求)の候補に挙げられていることに注意を要しよう。40人学級に戻して教職員定数を4000 人減らせば、86億円の削減効果が望める。これに期末・勤勉手当で一般行政職より優遇されている220億円分を減額すれば、計306億円(他に地方負担分612億円)で3〜5歳全員について年収360万円未満までの世帯を無健化できるという。
 財務省が40人学級化を引っ込めたとしても、依然として財源確保の必要性は残る。消費増税も先送りされたし、文科省が身を削らなければならないことは必至だ。何より「新たな定数改善計画(案)」(10カ年)の実現どころではない。何兆円だ何千億円だという数字を扱う関係者にとって「たかだか86億円」(財務省政務三役)で世論の逆風を受けたと見せかけ、有利な立場に身をこうとしたのなら「一流官庁」としての遠望深慮は毎度のことながらさすがなものだ……と感心している場合ではないか。(W)

「小学校英語の教科化」

 文部科学省の有識者会議が、英語教育の改善・充実で報告をまとめた。小学校高学年で行ってきた「外国語活動」を中学年に前倒しし、高学年では英語を教科に格上げ。高校の「英語で授業」原則も中学校からとし、高校卒業時には生涯にわたって聞く・話す・読む・書くの4技能を積極的に使えるようにして「アジアの中でトップクラスの英語力を目指す」のだという。これまでの経緯を思うと隔世の感がある。
 1998〜99年告示の学習指導要領の改訂論議が決着した際、文部省(当時)の担当者は「次(の改訂の焦点)は小学校英語だろうね」と語っていた。しかし「生きる力とゆとり」を掲げたその指導要領自体が全面実施を前に猛烈な学力低下批判にさらされ、「次」である現行指導要領(2008〜09年告示)の改訂論議では学力向上路線への転換に追われただけでなく「英語より国語」という強硬な世論の盛り上がりで教科化どころではなくなった。
 その結果、小学校高学年で外国語活動の導入という中途半端な形で決着。中学受験の過熱化を恐れたこともあって、アルファベットや単語はあくまで音声によるコミュニケーションの補助と位置付けられた。しかし小学校高学年は抽象的思考力が高まる段階であり、単語や文を書きたくなる気持ちをくじかれた児童が学習に興味を失って「中学校において音声から文字への移行が円滑に行われていない」(報告)実態が指摘されているのは皮肉なものだ。
 今回も引き続き「英語より国語」を主張する声は世間に根強く残るものの、大勢にはなっていない。有識者会議も小学校での教科化に反対する委員はいたが、少数意見にとどまった。それより「グローバル人材の育成」が国の浮沈を懸けた課題として経済界などから強く要請され、民主党から政権を奪回した第2次安倍内閣と自公両党がグローバル化をアベノミクスの「第3の矢」の1本として強力に推し進めている。英語の教科化を退けた現行指導要領の改訂論議をリードしたのが第1次安倍内閣だったことを思い起こすと、感概はますます強まる。
 もし20年前から当時は国際化と呼んでいたグローバル化対応を視野に入れて本格的な英語教育の改革検討に着手していたら、今の日本はどうなっていただろう。小学校英語のネックは教員の専門性だったが、グローバル化を進めるべしとの国家戦略を立てるなら教員増や研修強化などの予算を戦略的に投入するのが本来の筋だ。しかしバブル崩壊後の「失われた20年」で大幅な予算要求さえしり込みせざるを得ず、現在に至った。自分も含め、つくづく日本人の先見性の無さが悔やまれる。(W)

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「子供の貧困対策」

初の「子供の貧困対策に関する大綱」が閣議決定された。7月末の予定を遅らせて概算要求直前まで検討を行ったものの、数値目標は示されなかった。とはいえ2013年6月に制定された対策法に基づいて政府が大綱を策定した意義は大きい。高校中退率の減少や大学進学率上昇のための経済的支援の強化など、「貧困の連鎖」を防ぐために教育面での充実もぜひ実現してもらいたい。
 先進国の貧困状態を測る代表的な指標が「相対的貧困率」である。等価可処分所得(世帯収入から直接税・社会保険料を除外したものを世帯人員数の平方根で割った所得)を低い順に並べ、その中央値の半分を下回る所得しか得ていない人の割合――と国際的にも通用する定義を書くと一見訳が分からないが、要するに平均的な収入の半分以下で暮らしている人の割合のことだ。
 国民生活基礎調査によると貧困家庭に育つ「子どもの貧困率」は2012年に16.3%となり、3年前より0.6ポイント増加した。今や17歳以下の子どもの6人に1人が相対的貧困状態にあり、40人のクラスに6〜7人はいる計算になる。とりわけ深刻なのが一人親世帯で、子どもの貧困率は3.8ポイント増の54.6%。シングルマザー家庭などの2人に1人以上とあっては、まさに女性の就労を含めて政府が総合的に取り組まなければ解決できる問題ではない。生活保護を受けている人の4人に1人は子ども時代に生活保護世帯で育っていたという調査もあり、貧困問題は社会的不平等でもあるのだ。
 今月の主要ニュースも、実はこの問題に関連することが多い。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)にしても、生活保護世帯を多く抱える学校は成績が振るわないことが当初から分かっている。追加分析謂査でも、保護者の所得や、両親の学歴を加えた「社会経済的背景」(SES) と子どもの学力には強い相関関係があることが立証された。親の収入が多いほど学力は高く、少なければ低学力、というのは身もふたもない話だが、そうした不利な状況にもかかわらず成果を出している「効果のある学校」が一定存在することも明らかになっている。そうした学校を増やすためには、校長の責任を追及して尻をたたくよりも、成績の振るわない学校に予算や優秀な教員を投入する教育政策こそが急務のはずだ。
 第2次安倍内閣の改造で下村博文文部科学相が留任した。あしなが奨学生の第1号として苦学した経験のある下村文科相は子どもの経済的支援に関しても人一倍思い入れが強く、大学までの授業料無償化を目指して教育目的税構想まで披露するほどだ。改造内閣の基本方針として、「教育の再生」の中に「家庭の経済事情に左右されることなく誰もが希望する教育を受けられるよう」との一文が入ったのは、法に基づく大綱の策定が影響したというだけでなく、首相の盟友である下村文科相の功績でもあるだろう。
 新自由主義的なアベノミクスが今後も所得格差を拡大させるのは必至だから、セーフティーネットとなる貧困対策も欠かせない——というのは言いすぎか。(W)

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発達障害

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子どもと保護者、教師の関わりについて考える分野の書籍を精選。
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家庭教育

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教員・親御様TOP



「授業がうまくいかない」「イジメが起きてしまった。どうしよう……」——こんな悩み、お持ちではありませんか?

クラスや子どもに関する悩みは、尽きることがありません。


しかし、そんなとき、1冊の本との出会いが、悩み解決の近道になるかもしれません。
まずは、下の項目から、どんな本があるかながめてみませんか。



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・もしかして、ウチの子、発達障害?


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家庭での教育、どうしていますか?

「八重山教科書採択問題」

政権交代をまたいで3年にわたり混迷してきた沖縄県八重山採択地区の教科書問題が、事実上ようやく決着した。採択地区の設定権限を持つ沖縄県教育委員会が同地区から竹富町を分離することを決定し、同町に対して是正要求していた下村博文文科相も違法確認訴訟の断念を表明したからだ。発端以来のアウトラインは「教科書採択」の記事で紹介しているから、ここでは問題の意味を掘り下げて考えてみよう。
 もともとの問題は、地方教育行政法で教科書採択権が各教育委員会にあるとされているのに、教科書無償措置法では採択地区内の教委が協議して同一の教科書を採択すると定められている「矛盾」にあった。ただし法律論上は「特別法優先の原則」によって地方教育行政法の特別法である教科書無償措置法が優先されるのだそうだ。おまけに無償措置法には学校の設置者(公立は教育委員会)に国から無償給与された教科書を児童・生徒に給与することを義務付けている。だから安倍政権で下村文科相が市町村に初の是正要求を行うといった強硬措置に出たのは「違法状態」を解消させるという国の姿勢としてあながち間違っているとは言えない。
 しかし前記事でも紹介されているように、民主連立政権下で当時の中川正春文科相が「地方公共団体自ら教科書を購入して生徒に給与することまで法令上禁止されるものではない」と答弁しているのは、内閣法制局に照会の上だったという。まあ、政権交代後は内閣の責任で憲法解釈を行うくらいだから、下位法の解釈など容易に変えられるのかもしれないが。
 そんな法律論の一方でどうにも割り切れない感じがしてならないのは、なぜ市町村の単独採択に道を開かないのかということだ。文科省は共同採択のメリットとして調査研究に一定規模の教員が必要なことや採択後の教材研究・授業研究を挙げているし、民主連立政権下でもヒアリングをしたら単独採択を望む声は極めて少数だったというから確固たるニーズもあるのだろう。しかし、これだけ交通も情報も発達した時代には幾らでも代替手段はあろう。「主たる教材」であればこそ、高校のように使用教科書が学校ごとに違ったっていいはずだ。
 そもそも知識・技能偏重から活用・汎用的能力重視へと教育課程改革が求められているのに、以前として国定時代のような「教科書絶対主義」がまかり通っているような気がする。採択時期になると「素人(レーマン)」の教育委員が優れて専門的である教科書を全部読んで最終的な判断を下すという一部自治体の方がよっぽど異常で是正すべき事態じゃないのかと、素人考えでは思ってしまうのだが。

(渡辺敦司/教育ジャーナリスト)

2014年7月ミニフェア「夏休み直前! 読書と読書指導・自由研究」

 

梅雨が明ければいよいよ夏休み。
夏休みの定番課題といえば、「読書感想文」と「自由研究」です。指導に悩む先生方や親御さんも多いはず。
そこで、「読書」「読書指導」「自由研究」に役立つ本を集めました。フェアや棚作りにお役立てください。

一覧はこちら。
*クリックすると大きくなります。

 

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出版会の取り組みについて

 よりよい教育書の棚作りには、教育に関する基礎的な内容のみならず、時流に沿った知識が必要です。そのため、教育図書出版会では、年に一度、教育書の販売促進を目的とし、書店様や取次様を交えた研修会をおこなっています。
 以下に、
研修会で配布される資料の一部をご紹介いたします。

 

●学習指導要領改訂の流れ

 全国のどの地域でも一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省では学校教育法に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めています。これを「学習指導要領」といいます。
 「学習指導要領」では、小学校、中学校、高等学校等ごとに、それぞれの教科の目標や大まかな教育内容を定めています。
 また、これとは別に、学校教育法施行規則では、例えば小・中学校の年間の標準授業時数等が定められています。
 各学校ではこれらを踏まえ、地域や学校の実態に応じて、教育課程(カリキュラム)を編成しています。

 「学習指導要領」は、戦後すぐに試案が作られました。現在のような大臣告示の形で定められたのは、昭和33年のことであり、それ以来、ほぼ10年ごとに改訂されています。

 

勉強会日程サンプル

次回の勉強会は○月×日に行います。

先生になる人へ

先生になりたい、これからなる、という方へ。

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授業の進め方

子どもがやる気になる授業作りに。

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「官民一体型学校」

 佐賀県武雄市が「官民一体型学校」の創設を文部科学省内で記者発表した。同市は総務省出身のアイデアマン樋渡啓祐市長の下、市立図書館の運営をDVDレンタル大手TSUTAYAに委託するなどユニークな市政で知られる。学校教育に関しても2012年度からは全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の学校別成績を公表しているが、昨年10月には前東京都杉並区立和田中学校長の代田昭久氏を教育監に招いて全校でタブレット端末を活用した「反転授業」(ビデオ授業で予習し、学校では内容を深める形態の授業)の導入を表明していた。今回の方針は、それに続くもの。
 市教委は、幼児・小学生対象の学習塾「花まる学習会」(さいたま市、高濱正伸代表)と10年契約を締結。まずは代田教育監が校長を兼任する市立武内小学校で同会講師との合同研修を実施して導入内容や方法を検討した上で、地域の同意を得た小学校2〜3校で来春から本格実施する。状況を見て他の小学校や中学校にも広げたい考えだが、ノウハウは市内全校で共有するという。
 発端は「官とか民とか、つまらないことはやめにして一緒にやろう」という樋渡市長が12年度から市教委に持ちかけ、受験に特化しない塾を探していたところ、13年2月に福島県内で行われたイベントで「教育改革実践家」の藤原和博氏(今年4月から無報酬の同市特別顧問)から同会を紹介されたのだという。
 その藤原氏は、ある意図を持ってリクルートや和田中の後輩である代田氏を武雄市に「派兵」したことを、今年2月に東京都内で行われたシンポジウムで明かしていた。大量退職・大量採用による教員の質の低下と、学力層の二極化により一斉授業が通用しなくなるという全国に共通する課題に解決策を示すためだ。そこには、もはや多忙化する学校現場のリソースでは課題に対応できない、という認識がある。
 ただし注意したいのは、武雄市では必ずしも公教育を否定していないことだ。代田教育監は「塾でやっていることを、そのまま導入できるとは思っていない」と強調。実際の教育も主に「優秀」な同市の県費負担教職員が行うとしており、「公設民営方式」とは一線を画している。
 一方で代田教育監は「現在の学習指導要領には構造的な問題がある」とも指摘する。教科縦割りの授業では「メシを食える大人」に育てることはできず、そのため同会のメソッドで各教科等に「横串」を刺すのだという。武雄市の取り組みは他の自治体、とりわけ教育行政に携わりたい首長の関心を呼ぶことだろう。それだけに取り組みの趣旨を正確に把握した上で、今後の動向に注目していく必要がある。


(W)

「教科書採択」

 沖縄県の3市町でつくる八重山採択地区で中学校教科書の一本化ができない問題が、政権交代から1年を過ぎていよいよ佳境に入ってきた。新年度を直前に控えて下村博文文部科学相が竹富町に対し、地方自治法に基づく是正要求を発動。都道府県経由で行われたケースは教育行政以外で過去に2件あるが、国が市町村に直接行うのは初めてだ。
 事の起こりは民主党政権下の2011年 8月、次年度から使用される中学校の公民教科書をめぐって、育鵬社版を推す石垣市・与那国町と、東京書籍(東書)版を推す竹富町が対立して協議が混乱。地区協議会の答申は育鵬社版だったが、その後に開かれた3市町の全教育委員による議論では東書版の選定が多数決で決まった。文科省は2市町側の申し出を受け、後の多数決は無効であるとしている。ただ、この時は採択地区の協議と違う教科書を採択した竹富町に対しては国が教科書を無償給与できない「違法状態」であるとしたものの、自治体が自ら検定教科書を購入して児童・生徒に無償給与することまでは法令上禁止されるものではないと判断し、国会でもそう答弁。竹富町の東書版採択を事実上容認した。
 それが自民党が政権を奪還すると対応が一変。下村文科相は13年3月、義家弘介政務官(当時)を沖縄県教委はもとより竹富町教委にも出向かせて異例の直接指導。10月には県教委に対して竹富町に是正要求を行うよう指示したが、県教委が躊躇を続ける中、ついに3回目の教科書給与を前に直接要求に踏み切った。しかし竹富町はこれに従わず4月8日、引き続き寄付により東書版を給与した。17日には文科省の求めに応じて慶田盛安三(けだもり・あんぞう)竹富町教育長が前川喜平初等中等局長と会談。話し合いは平行線に終わったが、今後も竹富町および文科省の対応から目が離せない。
 問題は、教科書の採択権限を各市町村教委と定めた地方教育行政法と、市町村立小・中学校の教科書は採択地区で共同採択を行うとした教科書無償措置法との矛盾にある。もっとも、後から定められた無償措置法の方が優先される、というのが文科省の解釈である。
 ところで今回のような採択問題の再発を防ぐため、政府は「教科書改革実行プラン」(1月号本欄参照)に沿って改正無償措置法を提出し成立させた。ここでは採択地区の設定単位を従来の「市郡」から「市町村」に改めたが、これは各市町村が単独で採択できるようにしたわけではなく、郡境を越えた市町村合併が行われている実態に合わせただけなので注意されたい。ただし沖縄県教委が八重山地区を分割して竹富町を単独の採択地区に設定すれば、15年度以降は違法状態が解消されることになる。その点も今後の焦点だ。


(W)

「教科書改革実行プラン」

世に師走と言うが、教育課題に関するニュースがこれほど集中した12月は近年まれだったように思う。教育委員会制度の見 直しが中教審で最後まで激論の末に答申化されたことも本来詳しく紹介すべきなのだが、それと並んで今後に大きな影響をもたらす可能性を秘めているのが、一 連の教科書改革だ。

不登校

 文部科学省の定義では、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)とされている。不登校の子どもの数は平成13年をピークに減少していたが、いま再び増加傾向にある。

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ピア・サポート

 仲間(ピア)がともに協力し合う関係をつくるために、学校が一体となって取り組む実践プログラム。予防教育的な生徒指導として開発・実践され、県や市単位で導入しているところも増えつつある。

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ファシリテーション

  チームの力を引き出し最大限の成果を生み出すために、話し合いを活性化し、ゴールを明確にし、実行に移すノウハウ。主に企業や、福祉の活動において用いられているが、最近では学校でも導入され、とくに特別支援教育を推進する上で効果がある。

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バーンアウト

 「燃え尽き症候群」ともいわれるが、看護師、ソーシャルワーカーなど対人援助職に特有のストレスとして研究されてきた。極度の心身の疲労感、感情の枯渇などがみられ、心のはたらきがうまくいかない状態。教師も例外ではなく、平成17年度病気休職者のうち精神疾患が約6割という現状を考えると、対策が急務といえる。

動機づけ(やる気、意欲)

 人間の行動が方向づけられるプロセスのこと。教育心理学の“王道”ともいえる研究分野。動機づけを分類する観点のひとつに、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」がある。「外発的動機づけ」に基づいた行動は、主として外からの何かしらの報酬を得ることが目標となっている行動である。引き起こされる行動は目標を得るための手段という意味を持つ。一方で「内発的動機づけ」に基づいた行動は、その行動を行うこと自体が目標となっている行動である。何のためにするのではなく、好奇心や興味・関心などを動機としている。学校教育では、基礎基本を重視する時代の流れの中で、改めて注目されるきざしがある。

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チーム支援

 スクールカウンセラーだけでなく、生徒指導主事や学年主任がコンサルタントの役割を担うことが多い。スクールカウンセラーや複数の教師、保護者等が援助チームをつくり、子どもの援助にあたることがある。

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対人関係ゲーム

 からだを動かし、相手の心にふれあう「遊び」で子ども集団をいきいきさせる、カウンセリングを生かした活動。不登校の子、集団になじめない子、発達の遅れがある子などが、自然にクラスに溶け込めるようになる。

ソーシャル・スキル・トレーニング (SST) ★

 人づきあい上の問題を学習性の行動の問題として考え、対人関係の問題やつまずきを改善しようという治療技法。ソーシャル・スキルとは、人づきあいを円滑に運ぶための諸行動のことであり、「社会性」のような性格や性質に似たものではないと考えられる。つまり、人づきあいの仕方は、学習によって習得されたものであることを前提としているのである。したがって、ソーシャル・スキルは教えることができ、学ばせることができるものである。

スクールソーシャルワーク(SSW)

 日本では、文科省が「スクールソーシャルワーカー活用事業2008年」として予算化し本格的展開となった。特定の資格制度を有しているものではなく、おもに社会福祉士・精神保健福祉士をはじめ、教員などでソーシャルワークを習得した人が担っている。個別の子どもや保護者への指導支援はもとより、学校外の関係機関との連携支援や、学校内の相談支援体制づくりにも対応することになっている。現在のところ、SSWはまだまだ知名度が低く、スクールカウンセラー(SC)ほど一般化もしていないが、SCとSSWの効果的な協働を行って成果につなげた事例も見られるようになってきている。

スクール・カウンセリング

 学校教育において行われるカウンセリング、またはカウンセリングを生かした活動を総称してこう呼ぶ。スクールカウンセラーだけでなく、教育相談主任・生徒指導主任・学級担任・養護教諭・管理職などが、それぞれの立場を生かして行っている。

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児童虐待

  「社会的虐待」と「親による虐待」に分けられるが、日本では「親による虐待」が「児童虐待」と認識されてきた。児童虐待防止法は、保護者がその監護する児童に対し、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4類型の行為をすることと定義しており、平成16年改正時には、教育行政や学校に対する役割規定が明確化された。

平成18年度の児童虐待相談件数は4万件を超えており、平成14年の40倍となっている(児童相談所が関与したもののみ。児童相談所が関与するのは虐待事例の約40%という結果が報告されている)。過去に虐待が疑われる事例に関わった経験のある教職員の比率は、小中学校でそれぞれ約32%との調査結果があり、学校関係者の関心が高まっている。

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自己肯定感・自尊感情 ★

 自分のできることできないことなどすべての要素を包括した意味での「自分」を、他者とのかかわり合いを通してかけがえのない存在、価値ある存在としてとらえる気持ち。不登校やいじめを経験した子ども、発達的な生きづらさや課題を抱えている子ども、また問題行動が見られる子どもなどは、自尊感情や自己肯定感が低いことが東京都教職員研修センターと慶應義塾大学による共同研究で明らかになっています。

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子どものメンタルヘルス ★

 いじめ、うつ、ひきこもり、虐待体験、発達障害のある子どもの外傷的体験など、近年子どもの心の健康については新たな様相が見えてきている。そのため、学校においても、児童・生徒の心の健康や発達の状態を把握し促進する活動が、スクールカウンセラーや養護教諭を中心に実践され始めている。

構成的グループ・エンカウンター

 ふれあい体験と自己発見をねらいとした、①インストラクション、②エクササイズ、③インターベンション(介入)、④シェアリングからなる活動。特別活動などに取り入れやすいため、学級づくりに活用され、広まりを見せている。

通級指導 ★

 教育現場では、かねてより通級指導(「教育上特別の支援を必要とする児童、生徒及び幼児に対し、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育」〈学校教育法75条①〉)を行ってきたが、これまではLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)の児童・生徒に対しては、法令上明記されていなかった。これを受けて、学校教育法施行規則が一部改正され、平成18年4月1日よりLD、ADHDの児童・生徒に対しても通級指導を行えるよう制度改正している。

通級による指導の対象とするか否かの判断に当たっては、医学的な診断の有無のみにとらわれることのないよう留意し、総合的な見地から判断することとされている。また、通級による指導を行うに際しては、必要に応じ、校長、教頭、特別支援教育コーディネーター、担任教員、その他必要と思われる者で構成する校内委員会において、その必要性を検討するとともに、文部科学省の委嘱事業である特別支援教育体制推進事業等により各都道府県教育委員会等に設けられた専門家チームや巡回相談等を活用することが求められる。

特別支援教育コーディネーター ★

  特別支援教育コーディネーターとは.、特別な教育ニーズを有する子どもたちやその保護者のための支援を学校全体で効果的に推進するために、校内及び関係機関との連携・調整を行う教職員のことをいう。

 そこで、すべての特別支援学校及び小・中学校において特別支援教育コーディネーターを指名し、校務分掌に明確に位置付けることが求められている。今後は、引き続き研修等を通じた人材養成を推進しつつ、可能な限りコーディネーターとしての校務に専念できるよう必要な配慮が行われるようにすることや、いじめや不登校等に対応する小・中学校の生徒指導体制の整備と関連付けた活用も含め、一層の効果的・効率的運用を促す必要があるとされている。

 また、特別支援学校においては、センター的機能を担う中核的存在としてコーディネーターが適切に位置付けられ、学校内及び関係機関・保護者との連絡調整役としての役割が期待されている。

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特別支援学校

  平成18年の通常国会において、学校教育法一部改正案が可決・成立したのを受けて、これまで特殊教育で取り組んできた盲学校、聾学校、養護学校を一元化し、平成19年4月1日より、新たに特別支援学校として運営されることとなっている。

  特別支援学校とは、端的に言うと「視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること」(学校教育法第71条)を目的とした学校である。

  また、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校の要請に応じて、教育上特別の支援を必要とする児童、生徒又は幼児の教育に関し必要な助言・援助を行うことが要請されている。

特別支援教育 ★

 特別支援教育とは、従来の「特殊教育」が対象とする障害だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めた障害のある児童・生徒の自立や社会参加に向けて、その一人ひとりの教育的なニーズを把握して、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善・克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行う新しい教育の枠組みを言う。

個別の教育支援計画 ★

 障害のある幼児、児童・生徒の一人ひとりのニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応するという考えのもと、長期的な視点で乳幼児から学校卒業後までを通じて一貫して的確な支援を行うことを目的として策定される計画を指す。教育のみならず、福祉、医療、労働などの様々な側面からの取り組みを含め、関係機関、関係部局の密接な連携・協力が不可欠なため、教育的支援を行うにあたり、支援計画を活用することが意図されている。

高機能自閉症

 高機能自閉症とは、3歳くらいまでに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味・関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないもので、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されている。

高機能自閉症の児童・生徒には、①光や音、身体接触などの刺激への過敏性がある、②問題を全体的に理解することが不得意である、③過去の不快な体験を思い出してパニックなどをおこすなどといった特性があることが指摘されており、これらを踏まえた対応が求められる。また、2次的障害が顕著に現れる場合もあることから、特に思春期には丁寧な対応が重要であるとされる。

アスペルガー症候群 ★

  アスペルガー症候群は、自閉症の三つの主症状(社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害およびそれに基づく行動の障害)のうち、コミュニケーションの障害が軽微なグループ。知的障害を伴わない自閉症を高機能自閉症と呼び、かつ、言語発達の遅れのない自閉症をアスペルガー症候群と呼ぶ。両者を高機能広汎性発達障害と呼ぶことも多い。保育園では、集団行動の枠が比較的緩やかなため、大きなトラブルとなることは少ない。しかし学童期になると、学校生活のうえで集団行動がとれないことが大きな支障となる。近年、大人のアスペルガーにも注目が集まっている。

  追記:2013年5月、アメリカ精神医学会の診断手引(DSM)が19年ぶりに改訂となり、DSMの第5版ではアスペルガー障害の分類がなくなり、自閉症スペクトラム障害に一本化されることになった。これまでアスペルガー障害と診断されていた人たちが自閉症スペクトラム障害の診断から外れてしまうのではという懸念もある。

LD(学習障害)

 LDとはLearning Disabilitiesの略で、「学習障害」を意味する。基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示す。その原因としては、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や環境的な要因が直接的な原因となるものではないとされている。

LD(学習障害)をもった子どもに対する指導は、特定の能力の困難に起因する教科学習の遅れを補う指導が中心となるとともに、ここの児童・生徒の認知能力の特性に着目した指導内容・方法を工夫し、個々の実態に応じた個別指導を行うことが有効であるとされている。

幼・保・小一貫教育 ★

 小学校に入学した児童が、集団で行動したり学校におけるルールを理解できないこと(小1プロブレム)が原因で、低学年における学級崩壊が近年多く報告されてきている。この背景について、中央教育審議会は2005年の答申で家庭や地域における教育力の低下が指摘したが、従来の幼児教育(幼稚園・保育園)と初等教育(小学校)との間には集団生活に対する教育的指導に関する格差があることを指摘する意見もある。

 こうした小1プロブレムを打開するため、東京都品川区では2010年度から全ての幼稚園・保育所を対象に従前小学校で指導してきた集団生活に関する指導や読み書き・計算に関する指導を行うようカリキュラムを作成することを決定した。具体的にはドッジボールやリレー、合奏を通して友達と力を合わせてやり遂げる満足感を体験させたり、ひらがなの読み書き、1桁の足し算・引き算をことを目標としている。その為小学校の教員が幼稚園や保育所に出向して教えたり、幼稚園教諭や保育士に認定制度を設け、指導できるよう検討している。

「領土教育」

文科学省は、尖閣諸島と竹島について、教科書編集の指針となる中学校と高等学校の学習指導要領解説書に「我が国固有の領土」と明記するなどの改訂を行い、全国の教育委員会に通知した。安部政権が最重要テーマに掲げる教育改革の一環で、これまで、外交上の配慮などから教科書の領土に関する記述は見送られてきたが、今回の改訂を受け、教科書の記述や学校現場での「領土教育」が拡充される見通し。

今回改訂されたのは、中学校社会科の地理、歴史、公民の各分野と、高校の日本史A・B、地理A・B、現代社会、政治・経済。解説書は通常、約10年ごとの学習指導要領実施に合わせて書き変えられ、次回は2016年度に全面改訂が予定されており、その前に変更するのは異例。一昨年の大臣就任以降、下村氏は、文部科学省幹部に領土教育の充実について検討を指示していた。

幼児教育振興アクションプログラム

 文部科学省では、昭和39年の第1次「幼稚園教育振興計画」以来、4次にわたって幼児教育に関する振興計画等を策定してきたが、平成18年10月4日に「幼児教育振興アクションプログラム」として新たに策定した。

 このプログラムは、幼児教育に関する総合的な行動計画であり、これによって幼稚園教育の条件整備に関する国の施策を展開していくこととなる。期間は平成18年度から22年度の5年間とするが、幼児教育をめぐる状況の変化を踏まえ、適宜プログラムの見直しを行うとともに関係施策の実施状況について中間年での評価を行うこととしている。

 プログラムの内容としては、①幼稚園・保育所の連携と認定こども園制度の活用の促進、②希望するすべての幼児に対する充実した幼児教育の提供、③発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実、④教員の資質及び専門性の向上、といった項目が盛り込まれる。

防災教育★

 文部科学省で平成23年3月11日の東日本大震災を受け「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」を設置し、平成23年9月に中間報告を発表した。その中で『自然災害等の危険に際して自らの命を守り抜くため「主体的に行動する態度」を育成する防災教育の推進』が急務であるとしている。

 防災教育は災害を想定した避難訓練はもちろんのこと、児童・生徒の発達段階に応じて危険を回避する能力と結びつけながら教科等の内容や特別活動等との横断的な関連付けが重視されている。また、学校独自の安全計画のとも結びついていることが重視されており、全国の学校で様々な取り組みがなされている。

認定こども園(就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設)★

 これまで就学前の子どもに対する教育・保育について、監督する官庁が2つ存在していた。一方は幼稚園を管轄する文部科学省で、他方は保育所(保育園)を管轄する厚生労働省である。このような中、小学校就学前の子どもの育ちを一貫して支える観点から、子どもの視点に立ち、「子どもの最善の利益」を第一に考え、幼保一体となった総合施設として「認定こども園」が設立された。

 「認定こども園」は、3~5歳児を対象として午前中は本来の幼稚園的な教育を行う。その後は夕方までは預かり保育。0~2歳児は保育中心で、一日中保育。これには未就園児の短時間保育などが含まれる。早朝と夜間には託児サービスを実施し、就労支援を行う。さらに、子育て相談や集いの場の提供など子育て支援の活動も行う。このような意味では、幼稚園でも保育所でもない第三の施設を新たに設けるというよりも、①就学前児童への総合的な幼児教育・保育、②地域における子育て支援の提供施設として構想されているものである。「認定こども園」制度については、平成18年3月に「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案」が国会に提出され、6月9日に可決成立し(6月15日付公布)、平成18年10月1日より施行されている。

日本語教室

  日本語学校は海外から来日し日本語がわからない人びとのため、ボランティアや行政により運営されているが、学校における設置も急務である。文部科学省は外国につながる生徒が多くいる学校には、日本語などを教える教師を配置している。しかし、それだけでは十分でないため、地方自治体が独自に教師を配置し、日本語教室や国際教室(学級)を設置するケースも増えてきている。日本の学校への適応を促すため重要な役割を担う一方、児童自身の母語を教えるなど、バイリンガル教育への取り組みもある。

文部科学省の調査によると外国籍児童の高校進学率は56.3%となっており、日本国籍児童の93.1%に比べ低い(外国籍児童には在日韓国・朝鮮人など日本語を母語とする児童も含まれる。また、不就学児童については反映されていない)。日本語を母語としない生徒の進学は厳しい状況にあり、日本語教育の拡充が急がれている。

中高一貫教育

 第二次世界大戦後の日本の教育体系は、小学校6年、中学校3年、高等学校3年のいわゆる「6・3・3」制を採用してきた。しかし近年その体系の見直しや改革が進み、平成10年の学校教育法の改正により、中学校と高等学校が一貫した教育課程を実施できるよう制度改正された。中高一貫教育には①「中等教育学校」(6年間の課程を一つの学校で一体的に教育する方法)、②「併設型」(同一の設置者が中学校と高等学校を設置し、入学者選抜は行わず接続した方法)、③「連携型」(市町村立中学校と都道府県立高等学校が教育課程の編成や教員・生徒間交流などの連携を強めた方法)の3パターンがある。なお現在では小中一貫教育や小中高一貫教育の実践研究なども行われている。

 このような見直しや改革の背景には、学校段階の区分がさまざまな子どもの発達の実態に即して複線化する意図もあるが、そのほか①学校段階の区分を超え、計画された教育を継続的に行うことで教育の効果を高めること、②高校入試の影響を受けずに安定した学校生活を送れるようにすること、③早期に優秀な人材を発掘し、育成することなどのねらいもあるといえる。

多文化教育

  アメリカ合衆国憲法と独立宣言に示されている自由、平等、正義、公正、人間の尊厳という哲学的理念の上に構築された概念で、1960年代以降、主にアメリカで、その後イギリス、カナダで発展してきた。人種、エスニシティ、社会・経済的階層、ジェンダー、性的指向性、障害などにおける社会的マイノリティの権利を擁護するための教育改革運動であり、多文化共生の下で生きるすべての市民にとって不可欠な知識、スキル、態度を育てる教育実践である。

日本では、外国人児童の増加により注目されるようになった。日本に暮らす外国人は200万人を超え、学齢期の外国人児童は約17万人と言われている(日本国籍取得者は含まず)。入管法改正により日系人移民の増加が著しく、その子女が日本の学校になじめないなどの問題が山積している。外国人住民の多い地域では外国人児童が半数を超える学校もあり、多文化教育の重要性が指摘されている。

達成度テスト

  政府の教育再生実行会議は昨年10月、現行の大学入試センター試験に代わる新たな共通テストとして「達成度テスト」(仮称)の導入を提言した。達成度テストは、年1回の大学入試センター試験と異なり、複数回受けられるのが特徴。1点刻みの合否判定も改め、段階別で評価する。同会議は、2次試験でも海外留学などの経験や高校での課外活動など人物本位の評価を重視するよう求めた。提言を受け、文部科学省の中央教育審議会が具体的な制度設計を議論しており、今年7月頃に答申が出る見込み。導入までには少なくとも5年程度の時間がかかるとみられている。

  改革の背景にあるのは現行制度の限界や様々な弊害。事実上学力を問わない一部のAO入試や推薦入試が高校生の学習離れを招き、大学生の学力低下を招く一方、難関とされる大学では知識偏重型の試験も目立つ。海外の大学との競争も激しくなるなか、決まった答えのない課題に取り組むグローバル人材を育成できていないことが問題と指摘されている。

大学入試改革

 1980年代後半から90年代前半にかけ、いわゆる「団塊ジュニア世代」の大学進学に伴い、既存の大学は学部・学科を私立学校法人は短期大学や四年制大学を新設した。なかには広大な敷地を確保するために郊外へ移転するなどで、差別化を図ってきたところもある。ところが最近では少子化により、大学の定員を満たさなくなり、今後大幅な再編が予想される。現在各大学では学生獲得のため様々な試みを展開している。特に大学側では、入口での確保を急務と見ており、入学試験が大きく変わりつつある。例えば90年代に導入されはじめた「AO[アドミッションオフィス]入試」(学力試験以外の面接や論文などで合否を決める選抜方法)や推薦入試で私立大学に入ってくる学生の割合が、平成18年入学者の50%を超えた。

  その流れの是非はともかく、今後学力試験だけにではなく、それ以外の評価により入試が構成されることから、高校側でも多様な入試指導が必要になってくることが推測される。

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スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)

  近年の科学技術の進展等に伴い、産業界で必要な専門知識や技術が高度化するとともに、従来の産業分類を超えた複合的な産業が発展してきたことを背景に、それらに対応した高度で実践的な教育が必要との問題意識のもとに、先進的な専門教育を行う高校として、「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」を、平成26年度より10校指定した。指定期間は3年間(最大5年間)。

  SPHは、5年間の専攻一貫教育や、大学・研究機関との連携など、進んだ取組みを通して、高度な知識・技能をもつ職業人を育成する。

  実践内容は、○特色あるカリキュラム編成(実験・実習、課題研究等)、○技術開発研究の推進、○高度な技術・技能の習得、○高度資格への挑戦、○他学科との連携など。

スーパー食育スクール

  学校における食育を充実するため、関係機関・団体との連携による食育のモデル実践プログラムを構築する「スーパー食育スクール」事業を、文部科学省は平成26年度より開始した。26年度指定校として、33事業42校を決定した。学校種別では、小学校26校、中学校8校、高等学校5校、中高一貫校3校。

  事業目的は、小・中・高校と大学や企業、生産者、関係機関などが連携し、食育を通した学力向上、健康増進、地産地消の推進、食文化理解など、食育の様々な効果について、科学的データに基づき検証することを通して、食育の一層の充実を図ること。

スーパーグローバルハイスクール(SGH)

  急速にグローバル化が加速する現状を踏まえ、社会課題に対する関心と深い教養に加え、コミュニケーション能力、問題解決能力等の国際的素養を身につけ、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーを高等学校段階から育成することを目的として、平成26年度より5年間の事業として26校が指定された。予算額は、平成26年度で8億円超という大きな事業。

  事業内容は、「国際化を進める国内の大学を中心に、企業、国際機関等と連携を図り、グローバルな社会課題を発見・解決できる人材や、グローバルなビジネスで活躍できる人材の育成に取り組む高等学校を『スーパーグローバルハイスクール』に指定し、質の高いカリキュラムの開発・実践やその体制整備を進める」というもの。

  具体的な取組みとして以下の内容をあげている。

○グローバル・リーダー育成に資する課題研究を中心とした教育課程の研究開

・実践

○グループワーク、ディスカッション、論文作成、プレゼンテーション、プロェクト型学習等の実施

○海外の高校・大学等と連携した課題研究に関するフィールドワーク、成果発表等のための海外研修

○帰国・外国人生徒の積極的受け入れ、大学との連携を通じた外国人留学生とのアカデミックなワークショップ

○大学との連携を通じた、課題研究内容に関する専門性を有する帰国・外国人教員の活用

新教育委員会制度 ★

  政府は3月4日の閣議で、教育行政に対する自治体首長の権限を強化する地方教育行政法改正案を決定した。教育長と教育委員長の一本化や、首長と教育委員会が協議する総合教育会議の全自治体への新設が柱。今国会で成立させ、来年4月の施行を目指す。課題となる政治的中立性の確保は、現行通り教育委員会を教育行政の最終権限を持つ執行機関として残すことで担保する。

  改正案は、常勤の教育長と非常勤の教育委員長を一本化した新たな常勤ポスト「教育長」を設置することで責任体制明確化を図った。首長には議会同意を得た上で直接任命・罷免する権限を与えるが罷免要件は従来と同様、病気などの場合に限定。新教育長の任期は3年で首長任期の4年より短くした。首長が任期中に少なくとも1回は新教育長を任命できるようにする。

小・中一貫教育

 小学校から中学校への進学時において、子どもたちが学習や生活環境の変化に順応できず、不登校やいじめが急に増える現象(「中1ギャップ」「中1プロブレム」などと称される)が起きている。これに対し小・中学校9年間の一貫した教育目標とカリキュラムによって、学力向上だけでなく、個々の子どものメンタルや生活指導にも成長に合わせた指導を行うのが小・中一貫教育である。このように域内の小・中学校の教育目標・カリキュラム等を一貫させる取り組みに加え、学校そのものを「小・中一貫校」として新設する例も見られるようになり、平成18年には東京都品川区、足立区、三鷹市で開校され、特に品川区の場合は、構造改革特区の一つとして全校で小中一貫教育が実施されている。

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市町村費負担教職員

 これまでは、構造改革特別区域法17条に基づく以外には、地方教育行政の組織及び運営に関する法律を根拠とする県費負担教職員制度により、市区町村が給与を負担して独自に教職員を任用することができなかった。しかし、市町村立学校給与負担法が一部改正され(平成18年4月1日施行)、今後は構造改革特別区域法17条に基づくことなく、市区町村が独自に教職員を任用できることとなった。具体的には義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律などに基づき、都道府県が定める教職員定数に応じて配置される教職員の給与等については、都道府県が負担することを明確にし、その他の教職員については、学校教育法5条の規定に基づき、市区町村が給与を負担して任用できるようになったのである。

指導改善研修

 指導力不足教員への人事管理の厳格化の一環として、教育公務員特例法において、新たに「指導改善研修」制度が創設された。指導改善研修は、指導が不適切であると認定された教員に対して行われる職務研修である。よって、従前の初任者研修、10年経験者研修に加えられる法定研修の一つに位置づけられる。当該研修への参加は、権限のある職務上の上司の職務命令に基づいて行われるもので、要件を満たし発令を受けた教員は、当該研修参加を拒否することはできない。

 指導改善研修の期間は、1年。ただし、特に必要があると認めるときは、2年を超えない範囲内で延長することができる。また、指導改善研修の終了時には、指導改善研修を受けた者の児童等に対する指導の改善の程度に関する認定を行い、なお指導の改善が不十分で児童等に対する指導を適切に行うことができないと認められる場合には、免職その他の必要な措置を講じられることとなる。

指導力不足教員の認定

 教員の大多数が、日々献身的に子どもたちへの教育活動に従事している反面、一部に指導が不適切な教員が存在する。このような教員に対する国民の目は、ますます厳しくなっている。こうしたことを受け、任命権者において指導が不適切な教員の人事管理システムの厳格な運用を通して毅然とした対応を講ずることを目的として、平成19年6月に教育公務員特例法が一部改正された。

 具体的には、任命権者は、教育や医学の専門家や保護者などの第三者からなる審査会の意見を聴いて、「指導力不足教員」の認定を行う。こうした認定を受けた教員に対しては指導改善研修を行わせる。当該研修時の認定において、なお指導力が不適切である場合には、免職その他の措置を講ずる、こととしている。

司書教諭

  「朝の読書運動」に代表される読書指導の充実とあわせ、学校における情報教育推進の一翼を担うメディア専門職としての役割を果たし、教育用ソフトウェアやそれを活用した指導事例等に関する情報収集や各教員への情報提供を行うなど、司書教諭は学校図書館法上においても図書館の中心的な役割を担う者として位置づけられている。

 司書教諭の設置については、これまで当分の間猶予することとされてきたが、司書教諭の養成・発令を一層促進するため、平成15年4月1日以降、12学級以上の公立学校において必ず配置することとされた。このため、平成15年度を境に司書教諭の数は約10倍にはねあがっている。

コミュニティ・スクール ★

  コミュニティ・スクールとは、学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、一緒に協働しながら子どもたちの豊かな成長を支えていく「地域とともにある学校づくり」を進める仕組。コミュニティ・スクールに指定された学校には「学校運営協議会」が設置され、教育委員会から任命された保護者や地域の住民などが、一定の権限と責任をもって、学校運営の基本方針を承認し、教育活動について意見を述べることを通じて、学校の様々な課題解決に参画することができる。地域の学校をコミュニティ・スクールに指定するには、学校、保護者、地域住民の意向を踏まえて、最終的には学校を設置する市町村の教育委員会が決定する。

高等学校と大学との連携

 高校と大学の連携により高校教育・大学教育、両者の改善充実をねらいとしたもの。従来広く実施されてきた高校生による大学への体験入学やオープンキャンパス、大学説明会があるが、近年ではさらに高校生による大学での講義の聴講や大学の公開講座への参加、あるいは大学教員による高校への出前授業や講演会など多様化してきている。

教員免許更新制

 一律に10年間とする方向を基本とし、その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に必要な刷新(リニューアル)を図ることを目的として平成19年6月に教育職員免許法が一部改正され、教員免許更新制が制度化された(平成21年度より施行)。教員養成部会は、これまでの審議を「教員免許更新制の運用について(報告)」(12月25日)にまとめ、公表している。

 例えば、①教員免許状の有効期限を一律に10年間とする、②免許更新の手続きについては教員免許状の有効期限内に免許更新講習を受講し、修了の認定を受けることとする、③更新に係る受講時期と講習時間については有効期限の満了前の直近2年間程度の間に受講することとし、講習時間については、最低30時間程度とする、④更新の要件を満たさない場合には教員免許状は更新されずに失効することとしている。

 なお中教審教員養成部会の報告を受け、文科省は平成20年4月教員免許更新講習に関する開発事業を全国の100余りの大学に委託。各大学では、平成20年度に教員免許取得10年目にあたる教員を中心に上記講習内容を「予備講習」として実施。平成23年には全国の451大学で必修・選択あわせて6、500以上の講習が実施され、延べ人数で30万人以上が受講した。

教育振興基本計画

 「教育振興基本計画」は、平成15年3月の中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」で提起されたものだが、数値目標を掲げるなどこれまでにない具体的な計画を構想していることが分かる。教育の最高法規である教育基本法にこの計画の根拠条文が置かれた以上、学習指導要領の内容も含め、これからの文教施策はすべて、この「教育振興基本計画」に則って行われることとなる。そのような意味で、この計画に盛り込まれた課題は、教育界における最重要課題と言うことができる。

平成20年度~24年度の5年間を第1期とし、平成25年6月14日、今後5年間の教育政策の基本方針などをまとめた第2期の教育振興基本計画を閣議決定した。中央教育審議会が4月に提出した答申をベースに、教育再生実行会議などの提言なども付加したものとなっている。

第2期基本計画は、「社会を生き抜く力の養成」「未来への飛躍を実現する人材の養成」「学びセーフティネットの構築」「絆づくりと活力あるコミュニティの形成」の<4つのビジョン>と、「生きる力の確実な育成」「課題探求能力の修得」「自立・協働・創造に向けた力の修得」「社会的・職業的自立に向けた力の育成」「新たな価値を創造する人材、グローバル人材等の養成」「意欲あるすべての者への学習機会の確保」「安全・安心な教育研究環境の確保」「互助・共助による活力あるコミュニティの形成」の<8つのミッション>から成り、8つのミッションは、それぞれに具体的なアクションが付されている。

教育再生実行会議 ★

  一昨年12月の第2次安倍晋三内閣誕生に伴い、昨年1月に「教育再生」を旗印に発足した首相の諮問会議。安倍首相は、教育に強い関心をもち、「経済再生」と並ぶ重要テーマに掲げ、かつてない規模とスピードでもとに改革が進められている。

  これまで4次にわたる提言を出し、現在、5次提言に向けて検討を重ねている。教育再生実行会議で提言として出されたものは、順次、中教審で具体的な制度設計に入るが、現在までに方向が出されたのは、およそ以下のようなものである。

○いじめへの対応

・「いじめ防止対策基本法」の制定

・道徳の教科化

○教育委員会制度の見直し

・首長の権限を強化するとともに、教育長と教育委員長を兼務する「新教育長」を設置

○土曜授業の復活

○グローバル人材の育成

・英語教育改革

○大学入試改革

・「達成度テスト」の創設

○教科書制度の改革

・検定基準と近隣諸国条項の見直し→「領土教育」の充実

○6・3・3・4制の見直し(学制改革)→現在審議中

義務教育の新しい目標

  新教育基本法に盛り込まれた「教育の目標」(2条1号~5号)の実現を目指し、学校教育法に新しく「義務教育の目標」が定められた。現行の学校教育法においても、各学校段階ごとに「教育の目標」が示されてきたが、このたびの法改正により、義務教育全体を貫く「目標」が明確に位置づけられたことになる。そして、この「義務教育の目標」を敷衍する形で、次期学習指導要領における各教科等の目標が定められることに留意が必要であろう(「義務教育の目標」は、以下の10項目)。

① 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神   に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

② 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養う   

  こと。

③ 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

④ 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。

⑤ 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。

⑥ 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。

⑦ 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。

⑧ 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図

  ること。

⑨ 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。

⑩ 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

新教育基本法を受けた諸制度改革

  改正教育基本法施行を受け、中教審は、緊急に必要とされる教育制度の改正について1ヶ月にわたる集中審議を行い、3月に「教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について」と題する答申を公表した。答申は、現行法制に大きく影響を及ぼす内容となっており、主要事項は以下の通り。

① 義務教育の目標の新設など、学校教育法の改正

② 教員免許更新制の導入など、教育職員免許法の改正

③ 指導が不適切な教員の人事管理の厳格化など、教育公務員特例法の改正

④ 教育委員会の在り方や国と地方の役割分担の明確化など、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正

教育基本法改正

 教育基本法は、憲法の精神に基づき、日本の教育理念から教育制度までにおよぶ基本原理を定めた法律で“教育の憲法”と位置づけられる。1947年3月31日制定後半世紀以上にわたって我が国の教育の発展の根幹をなし、多くの成果をあげてきた。しかし、近年の科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化、家族のあり方など、我が国の教育をめぐる状況が大きく変化し、様々な課題が生じてきた。こうしたことから、政府・自民党で平成15年頃から教育基本法改正の論議が浮上。平成18年6月の通常国会に法案が提出された。その後、12月15日に臨時国会において可決・成立され、22日に公布・施行された。

旧法では前文と11条からなっていたが、新法では前文と18条となり、「生涯学習の理念」「大学」「私立学校」「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」「教育振興基本計画」等といった条文が新設された。殊に、2条で1号~5号にわたって具体的な「教育の目標」が掲げられた意義は大きい。今後この目標を実現する方向に沿って、平成19年6月頃に学校教育法が一部改正され、「義務教育の目標」が新設されるとともに、各学校段階ごとの教育の目標が改められた。

英語教育改革計画

 文部科学省が平成25年12月中旬、「英語教育改革実施計画」を公表した。それによると、小学校では英語を教科に格上げし、中学校では英語による英語授業を行うことなどが盛り込まれている。グローバル人材を求める政財界の強い意向を反映した形で、5年後の実施を目指す。

 実施計画の骨子は以下。

  ○小学校は5・6年で教科(週3時間程度)、3・4年で教科外活動(週1、2時間程度)として実施

  ○小学校英語は専科教員を活用

  ○中学校は「英語で授業」を基本

  ○高校は発表や討論形式を導入

  ○高校卒業時の目標を現在の「英検準2級~2級」から「2級~準1級」に引き上げ

  ○教員の研修を強化。英語教育推進リーダーの配置や外部人材の活用

  ○都道府県別に英語力の高い教員の割合を公表

  ○2018年度から先行実施

メディア・リテラシー

情報(新聞やテレビなど)を正確に読みといて必要な情報を引き出し、真偽を判断して主体的に活用する能力のこと。社会の情報化の進展に伴い、こうした能力を子どもたちに育成する必要性が高まっている。海外などでは、授業のカリキュラムに取り入れているところもある。

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ポートフォリオ評価

 子どもが自分自身の学習の記録をファイルし、自ら評価活動をする方法。従来の評価のあり方や考え方とは大きく異なり、子どもの主体性を重視する。現在の学習指導要領で「総合的な学習」が導入されたため、一気に注目を浴びることとなった。

PISAとTIMSS

 PISAは、経済協力開発機構(OECD)が実施している「生徒の学習到達度調査」、TIMSSは、国際教育到達度評価学会(IEA)が実施している「国際数学・理科教育動向調査」をいう。後者は児童生徒が学習した教科内容の理解度や定着度がどの程度かを明らかにすることをねらいとするが、前者は児童生徒が将来の社会参加や生活上の力を子ども達がどの程度身につけているからを探ることをねらいとする。つまりPISAは学校で学習したことが卒業後にどれだけ働く知識や技能となるかという観点から問題が設定されている。したがって測定されるのは教科に関する“能力”ではなく“リテラシー”と表現される。

PISA型読解力 ★

 平成19年12月にOECDが実施したPISA2006の調査結果が公表された。それによれば、日本の子ども達の学力のうち、「科学的応用力」が2位から6位へ、「数学的応用力」が6位から10位へ後退した。なお、「読解力」についても14位から15位へと後退するという結果となっている。

 このPISA型「読解力」とは「Reading Literacy」の訳であるが、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」と定義されている。

反転授業

 現在、学校では「授業を受けること」が主流だが、「反転授業」では、授業を受けることは「宿題」となる。教師や学校は、説明型の授業・講義を動画として用意し(授業ビデオ)、それを生徒が宿題として家庭などで閲覧しておく。学校での授業時間は、生徒たちが予習で得た知識を応用して問題を解いたり、議論を行ったりする。ふだん解けないような難しい問題に挑戦する時間にしたり、グループ学習やアクティブ・ラーニングを行ったりする。

 2007年頃からアメリカの公立学校教師の実践がきっかけで学校現場に草の根的に広がり、近年は大学や企業でも導入されている。最近、日本でも大学を中心に導入が始まったが、佐賀県武雄市では小学校でも取り入れている。

パフォーマンス評価(performance assessment)

ある課題に対して、児童生徒が身に付けた能力を発揮して行った行動を教師が観察し、学力が表現されているかどうかを実際に確認して評価することをパフォーマンス評価という。技能系の教科だけではなく、あらゆる教科で取り入れることができる。

パフォーマンス評価に用いる課題(パフォーマンス課題)には、小論文やレポート、絵や図表、デザインなどの完成品によって評価するもの、口頭発表や演技、器具の操作などの実技・実演を評価するものなどがある。

「思考・判断・表現」の評価は、それぞれの教科の知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を児童生徒が身に付けているかを評価するものであることから、パフォーマンス評価が適している。

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「人間力」

 平成15年4月の内閣府人間力戦略研究会による「人間力戦略研究会報告書」は、自立した一人の人間として生きていくための総合的な力として「人間力」を打ち出した。これを受けて、平成17年10月の中教審答申においては、「子ども達の『人間力』を豊かに育てることが改革の目標であるとしつつ、学校の教育力、すなわち『学校力』を強化し、『教師力』を強化することを通じて、これを育てる」と提起している。

 この「人間力」とは、具体的には、自己理解、自己責任、健康増進、協調性、責任感、人間関係形成といった事柄が主たる構成要素として想定されている。

ニート

 ニートとは「Not in Education、 Employment or Training」の頭文字(「NEET」)で、総務省の労働力調査によると、「求職活動を行っていない15~34歳のうち、卒業者・未婚者で家事や通学をしていない者」の数は平成23年で約60万人(岩手、宮城、福島の3県を除いた集計)と、依然として高水準にあることがわかる。

 ニートは失業者(現在は無職だが求職活動をしている者)やフリーター(非正規型雇用で働く/働こうとする者)と異なり、無職のまま求職活動も通学も行わない。そのため「ニート=働くことに希望がもてない若者」を指すようになっている。こうした存在は、家庭などの経済的豊かさに裏付けられた現象ともいえるが、他方で「ひきこもり」の子ども達と共通するニート達の悩みに対する解決策を講じる必要性がある。その一つがキャリア教育である。

 ニート対策については、文部科学省も審議を進めており、平成18年に中央教育審議会より「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策について」と題する「中間まとめ」を公表し、今後の対応策を提起している。

土曜授業

 文部科学省は平成25年11月29日、学校教育法施行規則を改正し、教育委員会が必要性を認める場合には、土曜日に授業をできると規定した。教職員の負担が増すことから、慎重論も強かったため、文部科学省は、教育委員会の判断で実施することを強調している。同時に、教育課程外で、教員や保護者、企業などさまざまな立場の人や機関がボランティアとして指導する土曜日の教育活動を促していく方針だ。

 土曜日の教育活動に関して文部科学省は、○「土曜授業」として教育課程内の学校教育として実施し、年間授業時数に数える、○「土曜の課外授業」として、教育課程外の活動とする(年間授業時数にしない)、○「土曜学習」(主体が公的なもの)として、教育委員会などが実施主体となる事業(年間授業時数にしない)、○「土曜学習」(主体が公的ではないもの)として、NPOなどが実施主体となる事業(年間授業時数にしない)・・・の4類型を示した。改正前の土曜授業に関する省令は、土曜日を公立学校の休業日に位置づけたうえで、「特別の必要がある場合」は例外にしていた。この記述が曖昧との指摘があり、「当該学校を設置する地方教育委員会が必要と認める場合」に改めた。

道徳の教科化 ★

深刻ないじめ問題への対応として、「道徳教育の充実に関する懇談会」は、道徳を小・中学校の「特別な教科」と位置付ける報告をまとめた。今後、中教審において、検定教科書や成績評価、教員養成のあり方について議論が進められ、秋をめどに答申が出される。

道徳の教科化をめぐっては、第1次安倍内閣で設置された教育再生会議の提言を受け、過去にも中教審で議論された。しかし、検定教科書について「個人の内面にかかる問題を扱うので検定になじまない」といった慎重意見が多く、平成20年1月の新学習指導要領に向けた答申では判断が先送りされた経緯がある。

今回の中教審への諮問にあたり下村文科相は、「規範意識や自己肯定感、社会性、思いやりなど豊かな人間性を育むために道徳教育は重要だ」としている。

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道徳教育推進教師

 新学習指導要領によって新設された、小・中学校において、道徳教育の推進を主に担当する教師のこと。各学校において校務分掌上、最低1名を必ず指名しなければならない。道徳教育の指導計画の作成、全教育活動における道徳教育の推進、道徳の時間の充実と指導体制、道徳用教材の整備・充実・活用、道徳教育の情報提供や情報交換、授業の公開など家庭や地域社会との連携、道徳教育の研修の充実、道徳教育における評価、などを、道徳教育推進教師が中心となり、学校全体で協力体制を確立していくことに努める役割を担う。

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全国学力・学習状況調査 ★

 文部科学省が、原則として国公私立の小6、中3の児童・生徒全員を対象に行う国語・算数(数学)のテスト。全国で一定の教育水準が保たれているかを把握して課題を明らかにし、教育指導の改善を図ることが目的である。主として知識・技能に重点が置かれたA問題、主として活用力に重点が置かれたB問題からなる。全国調査は1960年代にも行われていたが、競争をあおるとの批判から廃止された。第1回目の学力調査は、平成19年4月24日に行われるとともに、児童生徒と学校を対象に、勉強への意欲や生活習慣、授業方法などを尋ねる質問用紙での調査も併せて実施された。平成22年まで実施された4回のテスト結果からいえることは、例えば、小学校国語において、出題された学習内容についてはおおむね理解していると考えられるものの、「知識・技能を活用する力」に課題がある、としている。同様の結果は、小学校算数においても見られ、今後の課題として浮き彫りにされた。平成23年は東北地方太平洋沖地震の影響で、調査自体が中止になった。平成24年4月17日に実施されたテストでは、従来の国語と算数・数学に加え、初めて理科が実施された。理科では観察・実験の場面から多く出題され、「知識・技能」と「活用力」 を一体的に問う形式の調査となった。

また、平成22年以降抽出方式で進められてきた学力テストは、平成25年4月24日に全国の小中学校で一斉に実施され、計30,962校、約228万7千人が参加した。

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絶対評価

 子ども達の学習評価は指導要録に記載されるが、小・中学校においては従来相対評価により学習評価が行われてきた。この評価方法は、集団の中での相対的な位置づけによって、子どもの学習状況を見るという数理的な客観性を持つ一方で、テストの結果などにより機械的に評価されるため、学級内の子ども達を序列化するといったマイナス面もみられた。そこで、平成10年版の学習指導要領に基づく学習評価においては、基礎的・基本的な内容を確実に習得し、子ども達一人ひとりの良い点や可能性、進歩の状況について直接把握することが重視され、絶対評価が採用されることとなった。しかし、絶対評価は評価規準に到達しているかに応じて行われるため、各学校が作成する評価規準自体の信頼性が問われている。

初年次教育

 高校までの教育からの移行がうまくいかなかったり、基礎的な知識・能力が身についていないためにドロップアウトする学生が増えていることを背景に、高校までの学習内容を補習したり、日本語の正しい使い方、論文・レポートの作り方、資料の収集方法、プレゼンテーションのやり方など、大学での学習に必要な基本的な能力や技術を獲得させるための教育。導入教育ともいわれる。2010年の調査では、85%の大学で導入・実施されている。

高校までの学習内容の補習は「リメディアル教育」とよばれるが、これも初年次教育に含まれる。

食育

 子ども達の食生活や食習慣の乱れによって、高血圧症など生活習慣病の若年化が加速するなど、健康をめぐる深刻な問題が起こっている。この背景には、食をめぐる社会環境の変化、保護者の養育能力の欠如などが指摘されている。学校教育においても、各教科などの指導内容を関連づけた指導が必ずしも意図的に行われてこなかったことから、学校や家庭において、子ども達一人ひとりに食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身につけさせる「食育」が緊急の課題となっている。

 また、学校における食に関する指導を充実し、子ども達が栄養バランスのとれた食生活を形成することが出来るよう学校教育法などが改正され、平成17年4月以降、各学校に新たに「栄養教諭」を配置することができるようになった。栄養教諭には「栄養に関する指導」「栄養に関する管理」が主たる職務として義務づけられている。なお、同年7月には食育基本法が施行されている。

授業のユニバーサルデザイン ★

 教科教育に特別支援教育の視点を取り入れることで、クラス全員が「わかる・できる」授業づくりを目指した指導法を指す。例えば特別な支援が必要なAさんのための指導の工夫が理解力はあるけれど、十分理解できていないBさんのためにもなる。この時Aさんに対する指導の工夫や配慮は、そのままクラス全員の子どもが、楽しく「わかる・できる」指導へと繋がる。「授業のユニバーサルデザイン研究会(代表 筑波大学附属小学校 桂 聖教諭)」が本指導法を研究、実践している。主に小学校国語科の指導を中心に研究・実践を繰り返しているが、近年では社会、算数、理科なども研究・実践対象としている。特に若年層の教員からの支持が高く、今後の動向が注目される指導法である。

国際理解教育

 日本では、1950年代、ユネスコへの加盟を契機に取り組みが始まる。80年代には、ユネスコの国際理解教育(「国際理解、国際協力および国際平和のための教育、ならびに人権および基本的自由についての教育」との勧告を基底にすえたもの)、開発教育・環境教育などの新しい国際理解教育、そして海外・帰国子女教育など「国際化に対応した教育」の三つが混在する状況となる。さらにそれ以降(80年前後に日本に紹介された)基本的人権・文化的アイデンティティの尊重のもと地球規模の開発問題・南北問題の解決に向け参加する態度を養う教育学習活動といえる「グローバル教育」として統合する動きが強まる。つまり、人権・平和・開発・環境から異文化理解・異文化コミュニケーションなどをテーマに実践されているといえる。

なお、教育現場では「総合的な学習の時間」が創設され、その例示として国際理解が示されたことから国際理解教育は「総合」で取り組まれているケースが多い。

協同学習

 協同学習とは、小集団を活用した教育方法であり、子どもたちが共に学習することでお互いの学力を高めようとするもの。小集団では「互恵的な相互依存」、「個人の責任」、「平等な参加」、「活動の同時性」が重視されている。学力向上、集団での人間関係の改善などの効果が報告されており、多くの小中学校で実践されている。また、アメリカでは19世紀から実践されており、多民族で構成された集団、障害のある子どもを含む集団など、さまざまな対象に活用されている。

キャリア教育 ★

 キャリア教育とは、望ましい「職業観」「勤労観」及び職業に関する知識や技能を身につけさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育を行うこととされている。とりわけ小・中学校においては、キャリアが子ども達の発達段階やその発達課題の達成と深く関わりながら、段階を追って発達していけるよう支援していくことが重視されている。このことを踏まえ、今後子どもたち一人ひとりのキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育が推進されることが求められている。

こうした動きを踏まえ、文部科学省は、「将来子どもたちが直面するであろう様々な課題に柔軟かつたくましく対応し、社会人・職業人として自立していくためには、子どもたち一人ひとりの勤労観・職業観を育てるキャリア教育を充実する必要がある」として、平成23年4月より全面実施の小学校学習指導要領にも盛り込まれている。

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カラーユニバーサルデザイン

色のユニバーサルデザイン。色の見分けがつきにくい、いわゆる色弱者への配慮や工夫をした環境づくりのこと。色弱者は男性の20人に1人で存在することから、学校ではクラスに1人が色弱の子どもと考えられる。そのようなことから、学校現場でも様々な角度からのカラーユニバーサルデザインへの取り組みが強く求められるようになってきている。

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学校評価 ★

 平成10年の中教審答申、平成12年の教育改革国民会議報告以降、教育における規制緩和・地方分権化が進むとともに、各学校は、我が校の経営責任を明確にし、当該地域や保護者への説明責任を果たすことが求められるようになった。こうしたことを受けて、平成14年に小・中学校設置基準(省令)が制定され(高等学校設置基準は一部改正)、学校の自己点検・評価が努力義務として法定化された。

 その後、文部科学省は、各学校の取り組みを踏まえ、平成18年3月に「義務教育諸学校における学校評価ガイドライン」を作成し、学校における内部評価と外部評価の2つの評価方法を軸に、評価項目、結果の公表方法を例示し、このガイドラインに沿って各学校は学校評価に取り組んできたが、文部科学省は、学校評価の更なる充実をめざし、平成19年6月に学校教育法を改正し、新たに法律レベルで「学校評価」の規定をおくとともに、省令を改正して従前の努力義務から完全義務化とした。また、学校の内部評価の結果をもとに保護者・地域住民による評価(関係者評価)を行うことを努力義務として併せて法制化している。ガイドラインは平成22年7月に改定され、「適切に説明責任を果たして保護者や地域住民等の理解と参画を得て学校づくりを進めていくため、自己評価や学校関係者評価に加えて、第三者評価を導入することにより、学校評価全体の充実を図る」として、学校に対する第三者評価に係る内容が追加された。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)

 ADHDとは、Attention Deficit / Hyperactivity Disorderの略で、「注意欠陥/多動性障害」を意味する。7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されており、年齢や発達に不釣り合いな注意力、衝動性、多動性を特徴とする行動障害で、社会的な活動や学業に支障をきたすといわれている。

ADHDに対応するためには、小学生など低年齢段階からの適切な指導が重要であるとともに、生活技能(主として対人関係技能)を身につけさせることが大切である。その際には、適切な行動に向けての自己管理能力を高めることも求められる。また、自信回復や自尊心(自己有能感)の確立、さらには自分で自分の行動を振り返ったり、他者が自分をどう捉えているのかを理解させる指導が必要とされる。

ESD

 ESDとは、「Education for Sustainable Development」の頭文字をとったもので、日本では「持続可能な開発のための教育」と訳される。「現代社会の様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出し、それによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動」と定義されている。つまり、「持続可能な社会づくりの担い手を育む」教育といえる。

1960年代以降、「持続可能な開発」などをテーマとする国際会議がもたれ、特に2002年の持続可能な開発に関する世界首脳会議において、日本が提案した「ESDの10年」(UNDESD)が、国連第57回総会において決議され、2005年~2014年までを「ESDの10年」として、ユネスコが主導する形で世界的な取り組みが進められている。

こうした動きを受けて日本国内でも、日本ユネスコ国内委員会を中心に取り組みが進み、学校教育については、第2期教育振興基本計画にESDが盛り込まれたり、現在の学習指導要領にも持続可能な社会の構築の観点が入れられている。現場でもそれを受けた取り組みが進められたり、特にユネスコスクールがその拠点校として指定されている。 今年は「ESDの10年」の最終年に当たっていることから、ユネスコ世界会議が名古屋市と岡山市で開かれることが決まっている。

活用力

 学習指導要領の学力観について、中央教育審議会は「新しい時代の義務教育を創造する」(平成17年10月)の中で、基礎的・基本的な知識・技能の育成(いわゆる習得型の教育)と、自ら学び自ら考える力の育成(いわゆる探究型の教育)の重要性が打ち出した。その上で、基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させることを基本とし、こうした理解・定着を基礎として、知識・技能を実際に「活用する力」の育成を重視する、とした。

こうした提起を受けて、平成19年に学校教育法が改正され、30条2項に以下の規定が定められた。

学校教育法30条② 前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

これまで教育の「内容・方法」について定める条文が存在していなかっただけに画期的な規定であると言えるだろう。この趣旨は、新学習指導要領でも「総則」において以下のように示し、これからの教育を充実していくための学力観を明確に打ち出している。

「学校の教育活動を進めるに当たっては、…基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむとともに、主体的に学習に取り組む態度を養い、個性を生かす教育の充実に努めなければならない」。

学習指導要領 ★

 学習指導要領とは、全国どこにおいても一定水準の教育を受ける機会を国民に保障するために定められた、国民として共通に身につけるべき教育内容を示す国の最低基準。約10年ごとに改訂されるが、平成元年版の改訂の目玉は「生活科」、平成10年版では「総合的な学習の時間」の創設であった。平成20年3月に告示された今回の改訂では「言語活動の充実」「思考力・判断力・表現力の育成」「小学校段階における外国語活動の導入」などがあげられる。

 中央教育審議会教育課程部会は、「幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」(平成20年1月)の「答申」を公表し、この「答申」を受けて、文部科学省は、同年3月に新しい学習指導要領(小・中学校)を告示した。

新しい学習指導要領においては、おおむねどの教科等においても内容・時間数共に増加し、近年の学力低下への対応が図られている。特に、算数・数学、理科の理数教育においては、平成元年に盛り込まれていた内容が復活したり、新規内容が盛り込まれるなど、大幅な改訂となっている。

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外国語活動 ★

平成23年4月より全面実施の小学校学習指導要領に新たに盛り込まれた。5年生と6年生に対し、週1コマ(年間35時間)の授業時数が割り当てられている。授業は担任が行うが、外国語補助教員(Assistant Language Teacher)が配置され、担任と一緒に進められることもある。平成24年4月からは、新教材“Hi、friends!”が使用されている。“Hi、friends!”では外国語を使用してのコミュニケーションスキルの向上と、中学校英語科へのつながりに配慮した内容となっている。

 教員の指導力、ALTとの連携、実践にあたっての校内体制づくりなどの課題を解決し、子どもたちにとって初めて生涯の第一歩となる外国語学習の内容充実が求められている。

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インクルーシブ教育(インクルージョン教育)

子どもたちの能力はさまざまである。勉強が得意な子もいれば、苦手な子もいる。インクルーシブ教育(インクルージョン教育)とは、そのような特別な教育的ニーズをもつ子どもたち(多様な学習者)に対して、通常学級においてなされる適切な教育を指す。単純な統合(インテグレーション)ではなく、特別な教育的ニーズ(文化的・民族的マイノリティ、経済的なハンディキャップ等も含む)に対して必要な教育を施すことで、通常学級への包摂・包容(インクルージョン)を目指している。

背景には特別な教育的ニーズを持つ子どもが、社会的に分断されがちな現状があり、これを打開するための動きとしてインクルーシブ教育(インクルージョン教育)が位置づけられている。

いじめ防止対策推進法 ★

平成25年6月、与野党の議員立法によるいじめ防止対策推進法が可決・成立した。2011年の大津市の中2男子自殺な

ど、深刻ないじめの状況を受けた措置。いじめの定義やいじめ防止対策の基本理念とともに、学校などでの体制づくりや施策の方向性について示しており、国を挙げたいじめ対策の第一歩となることが期待されている。

新法では、同じ学校に在籍しているなど、一定の人間関係にある児童生徒が行う行為によって対象者が心身の苦痛を感じているものを「いじめ」とあらためて定義。そのうえで、○国が定める「いじめ防止基本方針」に基づき、地方自治体や学校も方針を策定する、○学校は、教職員や心理・福祉の専門家などで構成するいじめ防止対策組織を常置する、とした。

 さらに、このいじめ防止対策推進法を受け、同年10月11日、条文標記があいまいな同法の運用を定めるために、国の「いじめ防止基本方針」を取りまとめた。基本方針は、重大ないじめについて、○被害者が自殺を図る、○被害者が身体や金品に大きなダメージや被害を受ける、○被害者が精神疾患になる、○被害者が1か月程度の不登校になる---と定義した。そのうえで、各教育委員会の下に日頃からいじめに対応する付属機関を設置し、この機関が日常的にいじめを調査するべき、とした。調査機関の構成については、弁護士や医師など専門知識のある第三者を具体的に明示、いじめ事案の関係者と利害関係がないことや、学会や職能団体の推薦を要件に盛り込むことで中立性を確保することとした。

国のこの基本方針を受けて各教育委員会がさらに基本方針を策定、さらに各学校でも基本方針を策定することになる。

ICT利活用推進

総務省は、教育分野でのICT利活用を推進することを目指し、平成22年度より、児童生徒11台のタブレットPC等を配備し、情報通信技術面の実証研究を行う「フューチャースクール推進事業」に取り組んでおり、平成24年度も、小学校10校・中学校8校・特別支援学校2校の実証校において、文部科学省「学びのイノベーション事業」と連携して同一の実証校で実証研究を実施しました。また平成255月にはマイクロソフト社など9社が小中学校教育のICT化を目的とする「Windowsクラスルーム協議会」を設立。今後は具体的な取り組みとして、タブレットデバイス、学習者用デジタル教材や電子黒板などが体験できる教職員向けセミナーやICT利活用に関する研修、ICT教育を進める教育委員会の技術的サポート、定期的な情報交換会などを提供する予定。

アクティブ・ラーニング

「アクティブ・ラーニング」とは、能動的な学習」のことで、授業者が一方的に知識伝達をする授業スタイルではなく、課題研究やPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)、ディスカッション、プレゼンテーションなど、学生や生徒の能動的な学習を取り込んだ授業を総称する用語。

情報化やグローバル化の進展に伴い、従来のような知識習得型では、これからの社会に生きる人材を育成できないとの問題意識から、自ら学び考える、そして、知識以外の多様な能力をもつ人材の育成をめざす。

高等教育分野で1990年代から導入が進み、いまや大多数の大学で取り入れられている。また、高等学校以下の学校においても広がりつつある。

キャリア・カウンセリング ★

職業、キャリアについて、生涯にわたるスパンでの方向づけや選択・決定ができるように、個人や集団に対して援助し、その発達を促進するためのカウンセリング。学校教育においては、進路に関するキャリア教育、進学・就職のガイダンスがこれに含まれる。特定の資格がなくてもこのサービスを提供することはできるが、厚生労働省が管轄して資格認定体制がつくられつつある。

アドラー心理学

20世紀初頭に活躍した精神科医、A・アドラーによって創始され、後継者によって発展してきた心理学。「劣等感」「共同体感覚」などをキーワードとし、勇気づけの心理学として広く知られている。子育て中の親、学校教師の間で関心が高まっている。

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アサーション・トレーニング

自分も相手も大切にした自己表現をするための、コミュニケーションのトレーニング。相手の言い分も尊重しながら、自分の考えや感情を表現し、円滑な対人関係を形成、維持することを目的とする。キャリア・カウンセリング、医療・看護、福祉の分野で導入・活用され、学校教育では、生徒指導や健全な発達を促すプログラムとして近年とりあげられるようになってきた。

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